91 / 95

イフストーリー 大学生

 午後の講義もそろそろ終わる。  スマートフォンで命にその事を伝えて、バッグにしまった。 「何かあんの?」 「え?」  唐突にそう聞いてきた凌平君。 「すげえ嬉しそうな顔してた。この後何かあんの?」 「ううん、迎えに来てくれるんだ。それが嬉しかっただけ。」  ひそひそと話していると、講義が終わった。 「迎え来るまで待ってんの?」 「うん。先に帰ってね」  俺は命を待っていないといけないから、凌平君と別れた。  大学内の空いているスペースで腰を下ろし、時間を潰す。  命に伝えたいことがいっぱいあるなぁ。  凌平君っていうお友達が出来たこと。  勉強が少し難しそうなこと。  それから……女の人が怖いってこと。 「あっ! ユキくーん!」 「え……」  女の人の声が聞こえた。  バッと振り返ると、そこにはさっき出会ったカナちゃんが居て、カナちゃんとお友達の女の子も二人いた。 「えっ、カナ誰このイケメン!」 「ユキ君だよ。たまたま同じ講義受けててさ。でも人見知りなんだって」  急に三人に囲まれて、呼吸がしづらくなる。 「ユキ君、誰か待ってるのー? 暇ならどこか行こうよ!」 「あ……いや、俺は……」  命、命……早く来て……。  そう思っているとスマートフォンが震えた。画面を見ると命からの電話で慌てて画面をタップする。 「ユキ? 着いたけどどこにいる?」 「ぁ……み、命……」 「……ユキ? 何かあった? ゆっくり息吸ってみて」  カナちゃん達に背中を向けて、深呼吸をすると少し落ち着いた。 「どこにいる?」 「ぅ、す、すぐに、行く……」 「慌てなくていいよ。ちゃんと待ってるから、気をつけておいで。このまま電話繋げてようか。」 「う、ん……」  振り返るとカナちゃん達が不思議そうに俺を見ていた。  会釈をして逃げようとすると、手を掴まれてゾワゾワっと体に嫌な感覚が走る。 「は、離して……」 「ねえねえ、彼女? ユキ君彼女いるの?」 「お願い……」  嫌だ。怖い。 「こ、恋人がいる! だから離して!」  思わず大きな声が出て、手を振り払い走って大学の外に飛び出した。 見慣れた車を見つけて慌てて乗り込むと、命が驚いた顔をしてる。 「よしよし、頑張ったな。シートベルト着けれるか?」  無意味に何度も頷いて、震える手でシートベルトを着けた。それを確認した命はゆっくりと車を発進させた

ともだちにシェアしよう!