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イフストーリー 大学生
大学から少し離れた先で車が止まる。
俯いて膝の上で拳を握っていると、優しく頭を撫でられた。
そのまま、引き寄せられて命の胸に顔を付ける。
「女に囲まれでもした?」
「……う、ん。怖かった……お母さん、思い出して……」
「……それは怖かったな。どうする、このまま家に帰る? それともトラに話聞いてもらう?」
トクトクと聞こえてくる心臓の音。
それが心地よくて、このまま眠りたくなる。
「……帰る」
「わかった。じゃああとちょっと我慢な」
「……手、繋いでいたい」
「ああ。俺も。」
握っていた手を開いて、差し出された命の手に触れる。
「命……俺、自分が嫌だ……」
「俺はユキが大好きだよ」
車はまた動き出して、しばらくするとマンションに着いた。
渋々手を離してシートベルトを外し、車から降りる。
すぐに命と手を繋いで、家まで歩き、靴を脱いだ命に勢いよくキスをした。
「んっ!」
驚いて軽く目を見開いた命は、直ぐに俺の背中に手を回して抱き締めてくれる。
「はぁ……命、俺……」
「うん」
視界がぼやける。
目に溜まった涙が、頬を伝った。
「お母さん、忘れたい……っ」
そう言うと命に抱っこされて、リビングまで連れて行かれた。
ソファーに座って、命にもたれ掛かる。
「忘れたいなら忘れればいいよ。ユキが辛くなる事を覚えておく必要は無い。」
「……命」
「ん? 忘れるのが難しい?」
首を振って否定する。
「ずっと忘れてたの。でもね、女の人を見たら思い出しちゃうのっ」
零れた涙を命が拭ってくれる。
「俺はユキがしたいことをすればいいと思ってる。怖いことはしなくていい。ユキが望むなら、ここにずっと居ていいんだよ。」
命は優しいから、俺の気持ちを一番に考えてくれる。
「無理に行かなくていい。怖いのがなくなってから行ったって遅くないよ。」
「……でもね、友達がね、出来たんだよ。」
命の肩に頬をつけてポツリと言葉を落とす。
「凌平君っていうの。俺が女の人が怖いのに気付いて、沢山助けてくれた。」
「そうか」
「だから……怖いけど、行く。折角出会えたのに、もう会えないなんて嫌だ。」
優しく頭を撫でられる。
「わかった。」
いつでも命の腕の中に帰れる。
命は俺を待っていてくれる。
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