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第7話
「釣りに行くぞ」
正直、そんな気分ではなかったが、外に出た方が気が晴れると言われ車に詰め込まれた。
「本当に気が晴れるの?」
「先輩を信じろ」
「人生の?」
「リタイアのだ」
さらりと言われ、意味が分からず大城の横顔を見詰める。
「俺も東京から逃げて来たんだよ」
「何の犯罪で?」
「人を顔で判断するんじゃねーよ!」
「じゃあ、何から?」
「人生」
どういう意味かは聞いてはいけない気がして、会話はそこで終わりにした。
目的地に着き、大城に教えて貰いながら釣りの用意を済ませると海に糸を垂らし、折畳み椅子に腰を掛けた。
何か話した方がいいだろうかと、横目で顔を伺う。
「男は弱い生き物なんだろうな」
「へ?」
「だから子供の頃から男なんだから我慢しろ。泣くなって叩き込まれる」
唐突な話題に否とも応ともつかない返事を返す。
「弱いくせに虚勢を張り続け、実際より大きく見せているだけだと自分自身が気付いていない。だから何かあった時に脆い。脆いが故に人を傷付ける」
「大城さん?」
「男の性根は根本的に変わらねぇ。甘ったれだ。どうしたって女に甘えちまう。お前の恋人はお前への甘え方を間違えたんだ」
「何か話が……よく分からないと言うか、例えがおかしいと言うか……」
「ん? お前の恋人って男じゃないのか?」
「お、おお俺一言もそんな事言っていないけど……」
「話の感じからしてそうだと思ったんだが、違ったか?」
「ちっ、違わないけど……」
ベッドでは俺が女役だから、女って言うのもあながち間違いじゃないけど……。
「俺は甘え方を間違えて、女房に逃げられた」
「え?」
「お前にばかり話させるのは悪いからな。こっちの事情も少しだけな」
「うん」
「俺は仕事して金を稼いでくれば、良い亭主。良い父親だと信じていた。だから家庭を顧みず、気が付いた時には女房と子供を失っていた」
それでリタイアを……。
「人間はバカだから失ってからじゃないと大事なもんの価値に気付けねぇ。お前の恋人は今頃後悔しているよ」
そうだろうか?
だったらいいんだけどな。
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