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第8話

沖縄滞在三日目。 逃亡するにあたり、勝司と暮らしていたマンションの荷物を実家に送り付けたのを思い出した。 一箱ならまだしも大型を六箱もだ。 多分、母からの怒りのメールが届いているに違いない。 恐る恐るスマホの電源を入れると、とんでもない数の着信があった。 一言謝ろうとスマホを操作していると、マナーモード設定のスマホが震えた。 「もしもし、母さん……」 『涼太! 一体何なのこの荷物!』 「あ……マンション出て行く事になっちゃってさ……」 『はあ? 何、悪さしたの?』 「何もしてないよ!」 『それで今どこに居るの!』 「今は友達の家に泊めて貰ってる」 『あんたに勝司くん以外の友達なんかいるの?』 「い、いるよ。友達くらい」 『何でもいいけど、居場所くらいちゃんと言いなさい』 「……ごめん」 『ごめんじゃなくて、何処の誰の家に居るの?』 「お……」 『お?』 「沖縄……」 『はあ? あんた……』 「何か美味しいもの送るから! ごめん!」 一気にまくし立てて通話を切るとそのまま電源を落とした。 どっと疲れた俺はベッドへ寝そべり、鬱々していると扉がノックされた。 「寝てたか?」 勤務中にも関わらず素の状態で話す大城の手にはフルーツの盛り合わせがあった。 「たくさん貰ったから一緒に食おう」 大城の顔を見たら、何故か胸が少し軽くなった。

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