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第4話
歩いて直ぐの場所に大型スーパーがあった。
値段も手頃だし……野菜も色んな種類取揃えてあるし、調味料もかなりのラインナップ。
ざっと見てもいい感じのスーパーだ。
ついでにここで買い物して帰るのも有りだな。
椿屋はそう考えながらにカートを手に店内を練り歩く。
あの先生……冷蔵庫には食材ゼロだったよな……?いつも、何食べてるんだ?
あ、そうか俺みたいに買いに行かせられるのか。成程!!とポンっと片手で拳作ってもう片方の手のひらでやりたい衝動に駆られたがやらない。
昭和的行動ですやん!!
作り置きとかあった方がいいかもなあ。
うーんと悩みながら椿屋は食材をカートに入れていく。
ミネラルウォーターも一緒に。
アルコールばかり採られてたまるか!!そんな思いから。
部屋に戻ると美少年伊佐坂はソファーでゴロゴロしていた。
「おせーよ!どこの県まで買いに行ってきたんだよ!」
舌打ち付きで言われた。
「先生の冷蔵庫、食材ないでしょ?あと、調味料も!」
椿屋は食材を袋から取り出しながら冷蔵庫やシンクの下やコンロ側に置く。
食材ゼロのクセに食器や鍋と包丁は揃ってるってどういう事だよ?
まあ、作らせる為なんだろうけど。
「先生、外食とかしないんですか?」
「しねーよ!めんどくせえ」
めんどくせえで終了。
「気晴らしに外食とか散歩する作家さん結構いるのに」
「うっせえよ!犬が全員散歩好きだと思うのか?家の中が好きな犬だっているんだ!覚えておけ」
その言葉を貰い……なんでこの人は喧嘩越しに言うんだろうか?と思う。
言葉使いも悪いし。舌打ちなんて話す度にやるし……躾がなっていない子供のようだ。
椿屋は伊佐坂をみる。
見た目はかなりいい。
寝転ぶ姿は子供がお昼寝したい!!そんな感じに見えるし。
強い言葉吐いてもポメラニアンがキャンキャン吠えてるみたいで可愛いし。
まあ、要するに全て面倒くさくてやらないのがこの先生だと落ち着いた。
カツ丼作りを開始する椿屋。
米も無かったから買ったのだけど……ぶっちゃけ色々買って万はいってしまった……しかも領収書切るのを忘れた。
あー!!!くそう!やってしまった。
米を洗いながら領収書を思い出してしまったのだ。
レシートがあるからいいかな?なんて考えに切り替わった頃、じーっと米を洗う椿屋に視線が。
横をみるとじーっと伊佐坂が見ていた。
「何してんすか?」
「見てる」
「見張りじゃなくて?」
「椿屋、手際いいなって」
「は?」
「使うモノをちゃんと側に置いて料理始めるし、調味料とか……色んな種類買ってきたしさ、今まで居なかったタイプ」
「あっそ、これ普通だと思いますけど?まあ、俺の普通だから他人には当てはまらないと思いますがね」
最後の言葉はまた、さっきみたいに嫌味っぽく言われるのを察しての言葉。
「お前、一言多い……俺が嫌味言うとか思ってるだろ?」
察しての言葉に嫌味を重ねられる。何を言ってもこう来るのかも知れない。
伊佐坂はずっと見ている。そんなに暇なのか?と思ったが原稿終わっているなら暇だよな?と「そんな暇なら手伝って下さいよ」手伝いを要求。
でも、めんどくせえって言葉で断られそうだな?なんて思ったりも。だから、「いいよ?何すればいい?」と返事が来たので思わず彼をジッ!!と見てしまった。
「何だよ?」
「いや、断られるかと思って」
「何だよソレ?手伝えって言うのに手伝わないっていうのはよ!」
若干、怒り気味だが手伝いを始める伊佐坂。
その姿はお母さんの手伝いをやる良い子。そんな雰囲気。
カツ丼が出来上がると伊佐坂は「すげえ!美味そう!」と丼片手にテーブルに。
「ちゃんとお吸物とサラダも!」
椿屋は彼の近くへそれぞれ置く。
「お前、料理上手いな?何かやってたのか?」
ガツガツ食べながら聞く伊佐坂。
「いや、母親が今どきの男の子も家事やれないと女の子にモテないよって無理矢理覚えさせられただけです」
「へえ、母ちゃん上手くやったな!それ、自分が楽する為だろ?」
そこ言葉にビンゴ!!と言いたくなった。
実際そうなのだ。母親も仕事をしており、息子が家事出来れば自分の負担が減るからだ。
中学生になると自分の分と両親と同居していた祖父の弁当まで作らされた。
でも、「美味しかった」と両親も祖父も言うから嫌じゃなかった。
目の前の伊佐坂も美味い!美味いってガツガツ食べている。
生意気……あ、いや、この言葉は年上の彼には当てはめてはいけないか……?
嫌味言っても美味いって言葉と美味しそうに食べる姿に全て許せた。
「ほっぺ」
椿屋は手を伸ばして伊佐坂の頬に付いた飯粒を取る。
どう見ても子供。
ガツガツ食べる姿もお腹空いた子供に見えて微笑ましい。
「お前は食べないの?」
「ここに来る前に弁当食べたんで」
「弁当?手作りか?」
「はい」
「まじでええ?俺も!俺も!!手作り弁当食べたい」
「今、カツ丼食べてるでしょーが!」
「明日作って持って来いよ!食ってやるから」
「はい?」
「お前んとこに連載抱えてんだけど?」
くそう!そうきたか!!
「分かりましたよ!」
「やったー!!」
「おかず何がいいんですか?」
「えっ?リクエストいいの?」
「当たり前でしょーが!嫌いなモノ入れた弁当とか食べたくないでしょ?」
「そうか……そうだな」
伊佐坂は何か考えた風で「なあ?弁当って普通何入ってるんだ?」と真顔で答えた。
マジかあ……!そっから?
「タコさんウィンナーとか卵焼きとか」
「タコさんウィンナーって赤いウィンナーをタコの形にするアレ?」
「そう!カニもありますよ、チューリップとか」
「マジで作れんの?」
伊佐坂の瞳がキラキラ。
な……、なんだこの可愛い生き物!!!
マジか!!タコさんウィンナーでここまで瞳キラキラさせるなんて幼稚園児くらいだと思ってた。
「じゃあ、全部入れてきます」
「本当か?」
伊佐坂はパァと笑顔になった。
ま、眩しい!!なんすか!その笑顔!!その天使の笑顔は!!!
「キャラ弁がいいですか?」
「キャラ弁?キャラ弁ってあのキャラ弁?作れんの?」
「作れます」
「まじか!!お前天才だな!」
肩をバンバン叩かれた。
何……その可愛さ。まじですか!!そうですか!
「じゃあ、夕食キャラ弁にします?」
可愛くて、つい、言ってしまった。
すると、伊佐坂が「まじかあ!!!」と飛び跳ねるかのように喜んだ。
俺……やばい。
ショタコンじゃないけど、この人……可愛すぎだろおおおお!!!!と心で絶叫した。
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