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第5話
伊佐坂の為に弁当箱を購入。
あんなに喜ぶなら弁当箱は自腹でもいいかな?なんて思ってしまう。
そして、……んん?あんなに子供っぽくて嫌味さえなければいい感じなのにどーして、皆、泣いて辞めたんだろう?
そんな疑問が浮かんだ。
なんせ、心が読めない。
考えてみる。もしかして、自分の可愛さをあんな風に使いお金を貢がせるとか?
は!!現に今、自腹でいい!!って思ったじゃん俺。
「あ、すみません領収書下さい」
椿屋は領収書を切って貰った。
やべえ……俺はそうはならないぞ!!!
そう決心して部屋に戻った。
伊佐坂は相変わらず、愛くるしく椿屋の周りをチョロチョロ。キャラ弁作る所を見たいとか言って離れないのだ。
瞳はキラキラ。
この瞳見た事がある……高校の時、祖父がやってる格闘技を教えるイベントで子供達の目の前で包丁さばきを見せた時と同じ瞳。
「お兄ちゃんすげえ!!シェフみたい」
ちびっ子に言われた。まさにそんな感じ。
「やっぱ、椿屋すげえや」
その言葉を発した伊佐坂は瞳キラキラ。
そのキラキラ光線をモロにくらう椿屋は『もう、騙されてもいい』とさえ思ってしまった。
「はい、キャラ弁」
出来上がった弁当を渡すと、「はあ……すげえ」とキラキラした瞳で見ている。
演技とは思えない。
暫く見つめた後、スマホで写真を撮っている。
「何してんすか?」
「可愛いじゃん!SNSにあげていい?」
「やってんすか?」
「お前んとこの会社の上の奴から言われたんだよ!先生のこともっと沢山の人に知って貰いましょって……俺、顔出しやってないし、別に嫌でもなかったからやってる」
「めんどくせえって言ってやらないタイプかと」
「お前、俺をどんな目でみてんだよ?色眼鏡かけてんなら外せよな?」
文句を言いながら伊佐坂は弁当にフタをする。
「食べないんですか?」
「もったいないから後で食べる」
まーじーでーすかああああ!!!
なんだよそれ!!後でとか、もったいないとか!
くうう!!作った側の気持ちを上げる言葉を知ってるよこの人。
「椿屋、お前、今日から飯当番な」
「へ?」
「いいじゃん!どうせ、通うんだろ?」
「そうですけど……まあ、いいですよ」
「マジでえ?やったね!キャラ弁また作ってくれよな」
目の前の子が成人済とか絶対に嘘だ!嘘に決まっている。
こんなにも無邪気に喜ぶ大人って会った事ない。
キャラ弁一つで……。
俺!!!ずっと、キャラ弁作ってもいいですよ!
椿屋は心で叫ぶ。
そんな興奮の中、電話が鳴った。
表示を見ると神田の名前。
あ、忘れていた……原稿。
「先生、原稿!!」
「ん?そこにあるけど?」
伊佐坂が指さす先に封筒があった。
迂闊……!!
そう言えばこの封筒、部屋に来た時から置いてあった。
中身を確認しながら電話に出る。
「椿屋!お前何やってんだよおお!まさか、もう、先生とすったもんだ」
『勘弁してくれよおお!椿屋まで辞めたら会社回らない』
言葉と心の声が交互に聞こえてきた。
あれ?聞こえる?
「原稿貰いました」
「マジか!良くやった!」
『良かったああ!!』
ダブルで聞こえてくる。
あれ?やっぱ聞こえる。なんで?
チラリと伊佐坂を見る。伊佐坂はスマホをいじっている。
こういう時でも聞こえてくるものなのに。
……そういえば、スーパーとか聞こえていたかも。
椿屋に聞こえてくる声は他の会話と同じで近くに寄らなければ心の声だとは気づかなかったりする。
誰の声とか興味ないし。
さっき、領収書切る時も店員が『早く言えよなあ』と聞こえた。
あれは教育がなっていない店員ではなくて、心の声かあ。
思い出して納得。
じゃあ、彼の声だけ聞こえない?
「もしもーし椿屋?」
神田の声で我に返る。
「はい、今、戻りますから」
そう言って電話を切った。
「戻るの?」
「はい、明日来ます……キャラ弁持って」
スマホいじってた顔が椿屋を見てキラキラとした表情に変わった。
くううう!!!眩しいッス!!眩しいッスよ!!
「明日、タコとかカニとかチューリップも!!」
キラキラした瞳で言われた。
「もちろんです!」
もう、下僕になってもいいかも知れない。そんな感覚が支配してくる。
嬉しそうな顔。
やばい!!なんだよ、天使かよくそ!!
帰るのさえ惜しい気がしてくる。
「あ、ミネラルウォーター入れてるんで、アルコールじゃなくて、水も飲んで下さいよ」
「チッ、お前は母ちゃんか!」
舌打ち。
その舌打ちさえなければなあ。
そう思いながら部屋を出ようとすると「椿屋、領収書切った?」と言われた。
「べ、弁当箱だけ」
「食料品は?」
「レシートあるからいいかなって」
「ふーん、ちゃんと切ったんだな。経費で落ちるといいな」
んん?あれ?
「後から返してくれるんじゃないんですか?」
「領収書通れば戻ってくるじゃん」
「いやいや、先生の食料品ですよ?」
「俺、アンタのとこに連載してる作家ですけど?」
そうきたか!!そう気やがったか小悪魔め!!
「そうやって前の担当からも」
「なんの事?」
「担当が辞めていく理由ですよ?毎回泣いて辞めて行くですよ、自分でやってるくせに」
椿屋がそういうと伊佐坂はスマホを置いて立ち上がった。
何?やる気か?
そう言えば投げ飛ばされそうになったのを思い出す。
伊佐坂が近付いてきて、椿屋の手を掴んだ。
また、投げ飛ばされるのかと身構えると身体にガシッと抱き着かれた。
その拍子に床に2人して転ぶ羽目になった。
「いたっ、」
とっさに受け身みたいに頭をぶつけないようにしたがどっしりと伊佐坂が椿屋の上に居る。
まさか、殴ってくるのか?と思いきや、おもむろに伊佐坂が服を脱ぎ出す。
んん?あれあれ?何してんの?
色白美肌が椿屋の目の前に。
本当に彼は成人済なのか?
目の前の身体は少年みたいだ。
そして、身体を浮かして下着まで脱いだ。
はあ?なにやってんだよおおお!!
「な、何してんすか?」
「ん?今からセックスしようかと」
「は?」
「椿屋、ガタイいいからチンコデカそう」
そう言って椿屋のジーンズに手をかける。
「やめ!!」
「俺、フェラとか上手いよ?」
「いやいやいや、ダメでしょーが!だいたい、何でセックス」
「一飯のお礼……現金ないからさ」
はいいい?
「いや、普通に現金くれればいいです!」
「金、金うるせえ!このカネゴン!!」
伊佐坂は椿屋のベルトを外し、ボタンも外すとファスナーも下ろした。
そして、下着の中に手を突っ込む。
「ちょー!!だめ!!待て!!ふせ!」
「犬か俺は!」
椿屋の上で可愛く拗ねてみせる伊佐坂。
可愛い……。
身体も凄く綺麗だ。
つい、目の前の身体を見つめる。
乳首とか……桃みたいな可愛い色。
肌も色白美肌で。
「その気になった?」
伊佐坂の手が椿屋の頬に。
「俺、セックス上手いよ」
そう言って顔を近付けてきた。
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