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第7話

やべえ!何これ?くそ可愛いんだけどおおお!! まるで彼シャツを着たような伊佐坂の姿。 「何プレイ?」 ニヤニヤしながら椿屋を見る伊佐坂。 本当、姿だけは最高なのにな……とため息が出そうだ。 「原稿下さい」 「まだ諦めていなかったのかよ?」 「当たり前だろ!原稿!落とせない!絶対!!」 伊佐坂の目の前に手を出す。 その手をぺろりと舐められた。 「うおっ、」 思わず声が出る。 「この野郎め!!いい加減に!」 「セックスするだけじゃんか!この石頭ー!!」 「そのセックスが嫌なんだよ!この軽石頭」 「軽石頭……上手い事言うな」 伊佐坂は頷いている。 なんか、もう調子が狂う……なんだよ、本当に。 伊佐坂は椿屋の手を取るとギュッと握る。 「お兄ちゃん、僕に大人の遊び教えて下さい」 上目遣いでお願いする小悪魔。天使の顔しているくせに! 「おーまーえはあ!!!」 「あれ?この手もダメ?」 「ダメに決まってる!イタイケナ少年に悪さするみたいで嫌だ!」 「俺、成人済」 ふう~とため息をつかれる。 いやいやいや、ため息つきたいのはこっちだ! 「好きな相手としなさい」 「俺、椿屋好きだよ」 じっと見つめられる。……ドキッときた。 いや、待て!落ち着け俺!コイツは小悪魔だ! 「そんな嘘」 「俺の気持ちを嘘だって言うんだ……何で俺が椿屋の事知っていると思ってんだよ……俺、出版社で椿屋を見かけて……それ以来ずっと……担当になって欲しくて他の人達をダメだしして……やっと、やっと担当になって俺、嬉しくて」 そう言って伊佐坂はポロポロと涙を流した。 その涙はまるで真珠で、こんなに綺麗な泣き方をする人を椿屋は初めて見た。 綺麗だと思う。すごく…… 綺麗で儚くて弱い……そんな華奢な少年を泣かせてしまった。 その罪悪感はハンパない……。 「ご、ごめん」 伊佐坂は鼻をすすらせながら指先で涙を拭う。 その仕草に見惚れる椿屋。 凄い罪悪感が次々に襲ってくる。こんなに罪悪感を感じた事がないくらいに。 言葉をかけなければ……そう思うのに言葉が出て来ない。 と、とりあえず落ち着かせよう! 椿屋は伊佐坂の肩を抱くとソファーに座らせる。 そして、落ち着く何か……えっーと飲み物……? 水しかないやん!くそ!もっと他の買えば良かった。 牛乳とかココアとか……、しかも、その2つの飲み物は伊佐坂に似合う。 お酒なんかより凄く似合う。 とりあえず水かな? 椿屋は明日、ココアとか買って来ようと思うのである。 「ほら、水」 泣いている伊佐坂にグラスを渡そうとするが受け取ってくれない。 しくしく泣くだけ。仕方なくテーブルに置く。 ああ、もう!!俺、どーすんだよおおお!!こんな、こんな可愛い子泣かせるなんて! また、罪悪感が押寄せてくる。 「泣き止んでくれないかな?」 椿屋は伊佐坂の目の前にしゃがむ。 俯く彼の長いまつ毛が濡れてどうにも色っぽい。 泣き止まない時ってどーしたらいいんだっけ? 抱っこ?……これは子供か……。 頭を撫でる?……これも子供だ。 キスをする?……いやいやいや、それはないだろ? 迷った挙げ句、隣に座り、抱き寄せた。 凄く細い身体。本当に華奢なのだと身体に触れると分かる。 腕の中で泣く彼。 どうしよう……困った。つーか、俺が泣きたい。 ふと、視線を落とすと彼の太ももが視界に飛び込んできた。 そう言えば上着だけだったな。 「服着よう……風邪引いちゃう」 伊佐坂から離れた。 そして、彼を見るとそこには大きな瞳を濡らしている色っぽい顔。 泣いているせいで頬もほんのりと赤い。 な、なんじゃこの色気は!!! すると、泣いている彼がスルリと椿屋の上着を脱ぎ、全裸に。 白い肌にどうしても目が行ってしまう。 「抱いて……ください」 ピンク色の唇がそう微かに動いた。 ごくんと唾を飲み込んでしまう。 そして、彼に手を伸ばすと、彼は抱き着いてきた。 そして、そのまま椿屋は彼を押し倒した。 「優しく……して……」 震える声。 その唇にキスを落とすように顔を近付ける。 ……でも、本当にキスをしていいのかここで悩んでしまう。 躊躇していると、グイと頭を引っ張られた。 そのまま、柔らかいものが椿屋の唇に重なった。 そして、口内に舌が絡んできた。 くちゅ……そんな音を聞いた気がした。 椿屋の口内に入る舌は絡んでくる。 それが凄く気持ち良くて、椿屋もその舌を自分の舌で掴まえて、絡ませた。 くちゅ、くちゅ、 絡ませる度に音が椿屋の耳に届く。 凄く、いやらしい音。 唇がふいに離れ「きて……」と誘われる。 椿屋はそのままキスを落とし、何度もキスを繰り返す。 やばい……どうにかなりそう……。 「ベッドに連れていって……」 耳元で囁かれた。 ベッド…… 椿屋は身体を起こす。 そして、自分が組み敷いた相手を見る。 綺麗な……顔。 大きな瞳が椿屋を見ている。 「……って」 何か言いかけた椿屋に首を傾げる美少年。 その仕草も可愛い。 「ちがーう!!だめ!!絶対にだめ!!」 彼の身体を隠すように落ちた上着をかける。 だめ!!流されてはだめ!! 心に言い聞かせる。 「チッ、本当、頭のかたい野郎だぜ!とっとと、やればいいだろうが!このいくじなしめ!」 今まで泣いていた美少年が舌打ち。 あーーーー!!!うっかり!!本当にうっかりだった!コイツ、演技上手いんだったよおおお!! そう心でシャウト! 「ウダウダやってねえで、突っ込めばいいだろうがあ!お前、もしかして童貞?セックスやった事ないんだろ?」 吐き捨てられる言葉。 「童貞じゃない!」 そこ!即座に訂正。そして、ある事に気付く。 「俺が突っ込むのか?」 「はあ?何?突っ込まれたかったのか?」 意外そうな顔に椿屋はマッハで首を振る。 ……てっきり、入れられる側だと思っていた。 だって、あんなにギラギラしてさ……誘ってくるんだぞ?やられるって思うじゃん? 誰に対しての言い訳なのか、椿屋は自分で自分に言い聞かせる。 「ああ、だから、嫌がってたのか」 伊佐坂はニヤニヤしだす。 「違う!」 違わないけど、違う!!変な日本語だなって自分でも思う。 「俺、完全にネコ!受けだよ、受け」 そう言ってニッコリ微笑む。 「まあ、攻め昔やった事はあるけど、あれってさ疲れるんだよねえ。挿れられるのは乱暴じゃなきゃ気持ちいいしさ、相手がヘコヘコ腰動かしてくれるから楽」 なんだそれ?セックスも面倒くさいとか言い出すのか?誘うのに? 誘い受けだったとは…… 椿屋はその場で力いっぱい叫びたくなった。 馬鹿やろおおおお!!!!って。 「まあ、受けだって分かったわけだからさ、やろうよ!」 伊佐坂は椿屋に抱き着いてきた。 「こら、止めろ!」 「俺、名器だよ?挿れたくない?」 伊佐坂は椿屋の股間をモミモミ。 「だーかーらー!止めろって!」 「触った感じ、でかそうだよな、舐めていい?」 「いいわけないだろ!アホか!」 「いいじゃん!減るもんじゃあるまいし!」 「ダメだって!」 無理矢理、伊佐坂をどかそうとしてバランスを崩す。 そのままソファーに2人で転んだ。 椿屋が上で伊佐坂が下。 やばいー!と思った瞬間、部屋のドアが開いた。 「ダンちゃーん!ご飯食べたあ?」 女性の声も同時に聞こえた。 えっ?1人暮らしじゃ? 椿屋は部屋に入ってきた女性と目があった。 『おおおお、王子様?』 驚きの声。いや、心の声。 目を見開いて椿屋を見ている。 ハルカちゃんがどーして? 椿屋は部屋に入って来た女性が春佳宙だったので驚いて声が出ない。 「いま、取り込み中!」 椿屋の下から伊佐坂の声。 「あ、あ、うん、そだね!」 『きゃあきゃあー!うそうそ!まじでえええ』 話す声は落ち着いているのに心の声はうるさい。 しまった……絶対に誤解されている。 「あの、ハルカちゃん?」 「わ、私、自分の部屋行くんで……あの、続きどうぞー!」 ハルカは慌ててドアを閉めた。 「わあ!!待て、待ってくれえええ!!」 椿屋は叫ぶがハルカは戻っては来なかった。

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