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レは恋愛感情じゃない!のレ

朝食にパンケーキを持って来た椿屋。 大きめの皿にパンケーキを乗せて、持ち込んだ生クリームとフルーツを乗せる。 飲み物はミルクティー。 どうしてこのメニューかと言うと、伊佐坂に似合うから。 大皿に盛られたパンケーキを見た伊佐坂は「なにこれ、すげえええ!」と昨日みたいに大きな瞳をキラキラさせている。 それをみた椿屋の感想。 やっぱり似合う!!グッ!!と心でガッツポーズ。 「これ、ウサギのリンゴ?」 伊佐坂はウサギに似せたリンゴを手に嬉しそうに聞く。 「はい」 リンゴ1つでもこんなにキラキラとか……。なんなんだよ、この人。本当に天使か!! パンケーキを食べるとまた、パア~と笑顔になる伊佐坂。 小さい子供がホットケーキを食べているようで可愛い。 「すげえ、美味い!椿屋、料理上手いな」 ガツガツ食べる伊佐坂。 本当、子供……しかも、また、頬につけてるし。 椿屋は手を伸ばすと伊佐坂の頬についている生クリームを指先で拭う。 その指先を伊佐坂がパクンと咥えた。 そして、柔らかいくて生暖かい舌が椿屋の指に絡みついてきた。 昨日のキスを一気に思い出した。 チュウチュウと指先を吸われる。指を咥える伊佐坂が可愛くてエロくて、その姿にドキドキしてしまう。 いや、いかん!!また、コイツのペースに…… 椿屋は指を抜く。 すると伊佐坂はふふっと笑い。また、食べ始める。 ああ、もう、コイツ、一々エロい……。 「なあ、弁当も作ってきたのか?」 「ありますよ」 椿屋は伊佐坂の目の前に弁当箱を置く。 弁当箱出しただけなのにキラキラ攻撃……ああ、もう!! 「昼の楽しみにする」 「開けないんですか?」 「今、開けたら楽しみ無くなるじゃんか」 「…………」 くうう!!どうしてくれよう、この可愛さ。 嬉しそうにチラチラ弁当箱を見るけれど、決して開けない可愛さ。楽しみに取っといてくれるのか……口の悪さとセックスしよう!が無ければなあ。なんて椿屋は伊佐坂の可愛さに悶えそうだった。 「ご馳走様」 綺麗に完食。 「風呂入ってくる」 伊佐坂は立ち上がると風呂場へ。 椿屋はその間に食器を洗う。 そろそろ、仕事行かなきゃな……と壁にかけてある時計を見る。ここからなら、半くらいに出れば間に合うか。 コーヒー飲みたいなと考えていると、ペタペタと足音が。 その足音の方へ視線を向けると素っ裸の伊佐坂の姿。 「ちょっとおお!!何やってんすか!」 思わず大声を上げる。 「ん?着替え忘れた」 「それくらい、大声で言えば持っていきますよ!」 しかも、髪をちゃんと拭いていないから床に点々と小さな水溜り。 椿屋は風呂場に戻り、タオルを持って戻ってくると伊佐坂の髪を吹く。 「ちゃんと拭いて下さい」 「んー?めんどくさい」 「いつも、こうなんですか?」 「宙が面倒見てくれる」 「えっ?ハルカちゃんの前でも裸なんですか?」 驚く椿屋。いくら身内とはいえ、裸は……。 「服は着てるよ」 ああ、なんだ、良かった。 ホッとする椿屋。 伊佐坂はソファーに素っ裸で座る。 「ちょ、服!!」 「持ってきてくれんだろ?さっき言ったじゃん持ってくるって」 「確かに言ったけど」 それは風呂場から叫べと言っただけだよ!と突っ込みたい。 椿屋はくそう!と思いながら伊佐坂の着替えを取りに行く。 どこまで世話の焼ける奴なんだよおお、もう! 着替え一式を手に戻る。 服を渡しても自分で着ようとはしない。やはり、俺が着せるのか……? 「ほら、下着」 椿屋は下着を穿かせるべく、広げる。 下着は穿いてくれたものの、他はなかなか着ようとしない。時間ないのにいい! 「服着てくださいよ!俺もう、仕事行きますから」 服を着せるのを諦めた椿屋。 「えっ?仕事行くのか?」 伊佐坂はしょんぼりとした顔で椿屋を見る。 子犬が寂しがるような瞳。行かないで、連れて行ってと訴えるあの瞳。うるうるとした……。 ズキッと胸が痛むのを感じた。 そして、ズキッと痛む自分に何でだよおおお!と突っ込みたい。 伊佐坂はしょんぼりして俯く。 ああ!やめろ、そーゆーの。子供を保育園に預けるお母さんの気分になるだろーが! 「夕方、また、来ますし」 まだ、俯く伊佐坂。 いや、別に気を使わなくててもいいんじゃないかな? 「じゃあ、行きますよ」 そう言った時に神田から電話がかかってきた。 何事?と電話に出る。 「椿屋?お前今、伊佐坂先生のとこにいるんだろ?今日は出勤しなくていいぞ」 『椿屋に辞められてたまるか』 「えっ?」 「伊佐坂先生からLINEで椿屋借りるってきたから」 椿屋は振り返り伊佐坂を見る。 ニヤリと笑う伊佐坂。 くそ!コイツううう!! 「じゃーな!」 電話は切れた。 「仕事行かなくて良くなったな」 「何すかもう!」 「椿屋面白いから、それに家事出来るだろ?」 「……まさか、それって」 「洗濯物たまったんの」 「やってくださいよ!それくらい」 「めんどくさい」 「また、それですか?」 「担当は作家が創作活動しやすい環境作るものだろ?」 「なんか違う気がします」 「いいから、洗濯」 「その前に服着て下さい」 「お前が着せればいいだろ?」 ハア~とため息が出る。 やっぱ、俺って奴隷じゃんか! 仕方なく伊佐坂に服を着せて、洗濯を始める。 アイツ、何もしないんだな……じゃあ、いつもはハルカちゃん? ハルカちゃんも大変だな。 あれ?でも、食事ってどーしてるんだ? ハルカちゃんが家事やってたなら、手作りの食事の写真があっても良いのに。 「宙?あいつ、料理出来ないぞ?洗濯と掃除はそれなりに出来るけど」 伊佐坂に聞いてみたら、その答え。 「1度作って貰ったら食中毒で、3日トイレの住人になって原稿落としそうになった」 ああ、それならコンビニ弁当が良いな。 「椿屋は料理上手いから助かるよ」 期待した瞳で見られて複雑な椿屋。 「なあ、また、パンケーキ作ってくれよな」 にぱあっと全開の笑顔。 あ、俺、奴隷でいいです。 「はい」 「やった!ウサギのリンゴも!」 「ウサギのリンゴ気に入ったんですか?」 「うん、あれ、可愛いな」 なんだろ?この人のこの可愛さは……。 最終兵器的な? 「わかりました」 椿屋のその言葉で子供が玩具買って貰ったみたいな笑顔。 こき使われている現状だけど、許してもいいか。と思う自分がいる。

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