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ミは見かけとのギャップのミ。
「先輩、不器用ですね」
神田の手つきを見て呟く椿屋。
「えっ?そうかあ?」
神田は自覚なしの不器用なのだと椿屋は確信。
「じゃあ、次はトンカツ作るから」
「トンカツ……色々作るんだな?豪華にするとか愛が見え隠れしてるよ」
『それ程に伊佐坂先生に惚れてるのか……掘れて……あ、椿屋の手の怪我じゃエッチも大変そうだな?……あっ!!まさか伊佐坂先生に騎乗位させるんじゃあ?』
余計な心の声も聞こえて「口より手を動かす!!」と怒る椿屋。
本当にもう!
こういう時は心の声は面倒臭いと思う。
人は恋愛関係と悪口を常に心で話してるものなのだから。
「はいはい、椿屋くんはツンデレだから」
ニヤニヤする神田。
一発殴ろうかと考えてしまった。
「ツンデレでもなんでもないです!ほら、作業して!」
そんな椿屋の指示の元、トルコライスは出来上がったのだった。
「はい、先輩ご苦労でした」
椿屋は神田の背中をグイグイ押す。
「えっ?俺の分は?」
「ないです!そもそも2人分しか作ってないでしょ?」
「俺と伊佐坂先生の分じゃないの?」
「何で俺の分が抜けてるんすか?先輩は奥さん手作りのご飯あるでしょ?」
「ちぇっ!」
「はい、帰った、帰った!!」
グイグイグイグイと背中を押して玄関まで。
『そうか……俺が邪魔か……2人で食べたいんだな。椿屋意外と可愛いんだな、普段は何考えているか分かんない奴だけど、恋愛になると分かり易いんだ』
心の声が聞こえてきた。
何だよ、その分かんない奴とか分かり易い奴とか!!
「じゃあ、お疲れ様!先生によろしく」
神田はニヤニヤしながら帰って行った。
『夜は色んな事するのかなあ』
とそんな心の声を残して。
ちくしょう!!と思ってしまった椿屋。
気を取り直して伊佐坂を呼びに部屋へ。
何時もはキッチンに見に来る彼だが、神田がいるせいか……もしくは……やはりショックだったのか。
ショックだよなって椿屋は思う。
もし、自分が戻って来なかったら間違いなく犯されてる。
写真とか動画とか撮られて脅されて、それをネタにセックス強要。
捕まえて良かったと思う。
伊佐坂は寝室かな?と寝室を覗くが姿がない。
あれ?
「先生?ご飯出来ましたよ?」
少し声を大きく叫ぶ。
「椿屋、こっち!」
声が聞こえた。
クローゼットの方から。
行ってみると伊佐坂が「これ、どうよ?」と衣装チェンジしていた。
次はミニスカートのメイド服。しかも、ガーターベルトが太ももに……。
絶対領域って今も使うのか分からないけれど、太ももはニーハイソックスとフワフワミニスカートの間からチラチラ見える。
正直、可愛いと思った。
アリスの格好も可愛かったけれど、フワフワミニスカートも似合う。
「どーだ?」
くるりと回る伊佐坂。
フワフワのスカートが遠心力で上にフワリとめくれ、下着が見えた。
お尻の部分がハート形に開いたピンクの紐パンツ。女の子用。
お尻の割れ目がいやらしい。
「ご、ご飯冷めますよ!」
可愛い!可愛い!!可愛い!!!と叫びたかったが、それじゃあ変態なので心にしまう。
「なんだよ、可愛いとかあるだろ?」
プクッと頬を膨らませる伊佐坂。
くそう!!!なんで、そう一々可愛いんだよ!直視できねーじゃん!!!
「さ、先に行きますからね」
椿屋は逃げるようにその場から離れた。
あのまま、居たら可愛いと言ってしまうから。いや、言ってもいいのだけど、実際可愛いのだから。
でも、言えない。なんか、弱味握られているみたいで。
テーブルに戻り、深呼吸。
冷静になれ俺!!心に言い聞かせる。
「おお!!すげえーじゃん」
伊佐坂の嬉しそうな声。
「やったね、食べてみたかったんだあ」
いそいそと椅子に座る伊佐坂。
「なんかさ、大人のお子様ランチって感じでいいな」
椿屋に無邪気に微笑みかける伊佐坂が眩し過ぎて椿屋は頭がクラクラきた。
「そうですね」
平常心を保つのを心がけつつ、普通に返す。
「いただきまーす」
大きな声で手を合わせる伊佐坂。
……なんだこの可愛い生き物は?
その後は何時もの美味しそうな顔で食べていく。
「うまい!!」
椿屋をみて、笑う伊佐坂。
「ありがとうございます」
くっ!!なんだよもう……可愛すぎるだろーが!
「なあ?ウサギのリンゴは?」
「えっ?」
「ウサギのリンゴも食べたい」
……きゅん。
なんだろ?いま、胸が何かおかしくなった。
年のせいだろうか?
動悸息切れ?
「分かりました。作ります」
「本当か?椿屋、お前優しいなあ」
極上の微笑みをいただきました。
ご馳走様です。
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