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5話
「あの……気持ちいいですか?」
思わずだった……本当、思わず聞いてしまった。
「ん……気持ちいい……奥まで指入れて……」
伊佐坂の腰が揺れる。
気持ちいいんだ……そっか。
椿屋は言われた通りに指の付根まで中へ突っ込む。
「あああ!!」
伊佐坂が雄叫びを上げる。
奥まで入れただけなのになあ……まるでAV女優みたいに喘いでいる。
奥って気持ちいいんだな。
女の子とやった時も「奥まで~」とか言ってたな……。
入れる側も確かに気持ちはいい。なんせ、締め付けてくるから。
男も奥が気持ちいいのか……奥に何があるんだろ?
男同士のセックスが初めての椿屋はどうしても不思議だった。
中から自分が出した精液を掻き出す。これも初体験。
ゴムした方がいいよな。
…………んっ?俺、今……何考えた?
ゴムした方がいいよな?
えっ?俺、また伊佐坂先生とする気なのか?
うわあああ!!
俺って!!俺って!!淫乱!!ドスケベ!!変態!!節操なし!!
色んな言葉を自分自身へ投げつける。
今、当然のようにゴムつけようとかさ……何なの俺……。
そうだよ、さっきのセックスも気付いたらやってた。
気付いたら……気付いたらって。オイ!!マジかよ……。
本当に俺、どーしちゃったの?
前はこんなに性欲なかったじゃん!女の子と一緒に居ても話して終わったりとか……。
女の子と一緒に居て……。
ふと、その当時の事を思い出す。
魅力的な女の子と部屋に居てもどうしてセックスしなかったのだろうと考えると……そうか、心の声が邪魔をしていたから。
付き合い始めた頃は求められるのが嬉しかった。
椿屋くんとセックスしたいな。手を出してくれないかな?とか心の声が聞こえると……盛がきた犬たいに女の子に腰を振っていた。
でも……自分の彼女なのに「この前合コンでやった男って椿屋くんより、チンコ小さかったな」とか心の声が聞こえて、破局した事を思い出した。
そうだ……俺の恋愛はいつも余計な声で終わっていた。
その時はもう、心の声が聞こえない方が良いと悩んだな。
便利な時もあるけれど、面倒臭い時や傷つく時も同じくらいあった。
自分の能力をとりあえずは理解していたから、心の声を聞かないように音楽を聞いていたり、人が居ない場所へ行ったりして心落ち着かせた。
ここは……自分が1人になりたい時に居た部屋のように落ち着くのは何故だろう?
伊佐坂はエロい小悪魔でめんどくさいはずなのに……。
答えは分かっている。
余計な声が聞こえないから。
「もお……いれて……」
伊佐坂の声で我に返る。
「指で我慢して下さいよ」
「やあ……椿屋のおっきいのがいい……」
「ほら、奥まで感じてください!」
椿屋はグッ!と中へ指を何度も出し入れする。
「あんっ、あんっ」
アンアン……本当に言うんだなあ……人って。
伊佐坂は間もなくして射精し、その場にペタリと座り込む。
椿屋は指を抜くと伊佐坂へシャワーをかけた。
身体を洗ってやる事は出来ないからひとまず、シャワーだけ浴びて風呂を出る。
伊佐坂は相変わらず、ちゃんと拭かない。
まるで、幼稚園児だ。
「ちゃんと拭いて!床が濡れちゃうだろ!」
伊佐坂を捕まえて、片手でタオルを持ち拭いてやる。
「もう、手間のかかる」
「うるせえぞ」
文句を言いながらも椿屋から世話をされる伊佐坂をちょっと可愛いと思ってしまう。
「なあ、後で抜いてやろーか?」
「は?」
「片手じゃオナレないやん?」
「…………」
コイツはもう!
「ほら、服は自分で着てくださいよ」
「あ!!下着買う約束忘れんなよ!」
伊佐坂にビシッ!と指を指された。
「うっ……」
そうだった。俺が引き裂いたんだった。
「お前の好みでいいぜ?」
ニヤニヤする伊佐坂。
「それ着けてエッチしてやるからな」
「マジかよ」
「男が下着贈る意味ってそれだろ?」
真顔で答えられた。
「いや、贈るんじゃなくて弁償だから」
「素直になれよ椿屋!さっきのセックス良かったぜ?本当、野獣で」
野獣……。その言葉は自分でも合うんじゃないかと思った。
あの時は……どうして、あんなにムキになって激しいセックスをしてしまったのだろう?
本当、俺の馬鹿……。
「椿屋とのセックスすげえ気持ちいい……お前、上手いよな。数こなしてんだな……チッ」
褒めて……舌打ち?
「まあ、これで欲求不満は解消されるから楽しみだな」
ニヤニヤする伊佐坂。欲求不満が解消……ってオイ!俺とセックスする気満々かよう。
「さてと、仕事しよーかな」
伊佐坂はシャツだけ羽織ってパソコンがある方へと向かう。
「あ、椿屋、コーヒーね」
もちろん、要求も忘れない伊佐坂。
「はい」
仕事してくれるならコーヒーくらいお易い御用。
コーヒーを煎れて伊佐坂の元へ行くとどうしても彼の姿に目が行ってしまう。
シャツだけ……
太ももあらわで……そして、記憶間違いでなければノーパン。
何で俺はそこ見てんだよおおお!!!
テーブルにコーヒーを置くと椿屋は逃げるようにその場を去った。
ちくしょう!俺ってこんなにエロかったのかあ!!
のたうち回りたかった。
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