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9話

◆◆◆◆ 「……何で手を繋いでいるんです?」 椿屋は横に並んで歩く伊佐坂が手をギュッと握っている。 「えっ?デートだろ?」 「は?」 何を言い出すんだコイツは!!と伊佐坂を見るとニヤリと笑われる。 ですよね!からかわれてますよね? 「いいじゃん、俺みたいな可愛い子と手を繋げるんだぞ?……まあ、手を繋ぐより先に繋がったけどな」 ニヤニヤと下ネタ。 完璧にいつもの彼だ。 可愛い子……確かに可愛い子だ。 何故なら、マンションからスーパーまでの道のりで何度も伊佐坂をチラ見された。 そして、余計な声が聞こえてくる。 『えー、どんな関係かな?』 『親子かな?』 『えー、ロリコン?まさかねえ』 等、色々……あー、まじでうぜえ。 他人の事はほっとけよ。 口に出している事じゃないから文句も言えない。 そして、もっと気になったのが成人男性が伊佐坂にやたらと反応する事だ。 『うわあ!可愛いなあ……中学生かな?そんな子と手を繋げるなんてうらやましい……』 『可愛い……まだ処女かな?いいよなあ、可愛い……って横の男邪魔!居なかったら拉致するのに』 はっ? その声を聞いて聞こえた方を見ると椿屋の視線に気付きそそくさと歩いていく成人男性。 ……ダメだ!! この人を1人で出すのはダメだ。 面倒臭いってあまり外に出ない事を喜ぶべきだな。 椿屋はギュッと強く手を握る。 ◆◆◆ スーパーに着くとカートを引く。 「俺が持つ」 カートを嬉しそうに押す伊佐坂はまるで家の手伝いをする子供みたいだ。 食材を選んでいるとふと、伊佐坂の姿が消えた。 椿屋はギョッとする。さっき変な野郎の心の声を聞いてしまったから余計に心配になり周りをキョロキョロする。 「コレも買って」 伊佐坂がアイスを持って戻ってきた。 無事な姿にホッとするが「買わないわけではないけど、そういうものは1番最後!でなきゃ溶けちゃうだろ?」と注意。 「あ、そーか」 伊佐坂が戻しに行こうとするからその手を掴んだ。 少し驚いたのか椿屋の方を振り向く。 「一緒に行きましょう、先生、迷子になりそうで怖い」 怖いの本当の意味は変質者に狙われそうで怖いだった。 スーパーの中、手を繋いで買い物をした。 「あら?若いお父さんね……あ、お兄ちゃんかな?」 試食販売をしている年配の女性が声をかけてきた。 ソーセージの切り方を実演しているようで小さな子供もその場に居た。 「お嬢ちゃんも見ていかない?後からお母さんと作ってみたらいいよ」 「うん」 伊佐坂が嬉しそうに返事をするので暫く実演販売を見ることに。 ソーセージで器用に兎とかライオン、靴下、色々と形が出来ていく。 それを興味津々で見つめる伊佐坂。 目がキラキラで側に居る小さな子供と同じ顔をしている。 出来上がったウィンナーの飾り切りは見ていた子供達に配られる。 「お嬢ちゃんは何がいい?」 「ゾウ」 「ゾウさんね……はい」 渡されたウィンナーを嬉しそうに見ている伊佐坂。 「ありがとう可愛い」 「お嬢ちゃんも作って貰いなさい、切り方忘れたらネットで検索できるし」 「うん!パパがね作れるの」 ニコッと笑い椿屋を見る。 パパだとおおお!!! 「あら!良いパパね」 ニコッと微笑む女性。 『イクメンってやつね!感心だわあ!』 そんな凄い思いで微笑まれているのか俺……しかもイクメン……。まあ、確かに手がかかる。 それにしても伊佐坂は女の子だと信じて疑わなかった女性スタッフ。 椿屋がパパに見える程、童顔って事だ。 決して自分が老けているわけではないと椿屋は自分に言い聞かせる。 伊佐坂はそこそこ身長もある。 まあ、160cm台だけれど。椿屋と並ぶと小さく見えるみたいで子供扱いされたようだった。 「食べないの?」 伊佐坂は串に刺されたゾウのウィンナーを手に持ったままだ。 「可愛いから、まだ食べない」 「…………」 あー、俺、ロリコンでも何でもいいです!! 椿屋は一瞬思ってしまった。 ずっとゾウを見ている伊佐坂は欲しかった玩具を買って貰ってずっと離さない子供のようだ。 俺、ぜってえ!甘やかす!もう、絶対に!! 「大体の切り方は覚えたんで作ってあげますよ」 「本当か?」 キラキラした目。 この目が好きなのだ。 「だから食べちゃってくださいよ!荷物持てないでしょ?」 「うん」 素直に返事をする伊佐坂。 あー、ほら、うちの子、可愛いでしょ? そんな自慢したくなった。 パフェの材料も買ったし、苺も買った。飾り切り用のウィンナーももちろん買った。 会計を済ませ帰ろうとして、気付く。 パフェ用の容器がない。 このスーパーの2階は確か雑貨置いてたよな? 「ちょっと2階にいいですか?」 「えっ?アイス溶けちゃうだろ?」 露骨に嫌そうな顔をする伊佐坂。 「パフェ入れるガラスの容器欲しいんですよ!」 「まじか!!」 なんと、またパア~と笑顔を見せてくれた。 2階へと上がり、食器売り場へ急ぐ。 そこには大きさも形も結構な種類があった。 中間くらいの大きさを選ぶと「3つ」と伊佐坂が数をリクエストしてきた。 「3つ?どうして?」 「宙の分」 「カナタちゃん?」 「アイツ、パフェ好きなんだよ」 なるほど……。そういえば彼女は料理下手だったんだよな?朝ごはんとか夜とかコンビニなのかな? 会計をしながら、ついでに彼女の分も作ろうかな?なんて考えた。 まあ、ついでだ!! ◆◆◆◆ 部屋に着くと伊佐坂はさっそく買ってきたパフェの容器を袋から取り出している。 もう、この行動も子供みたいで可愛い。 「椿屋、お前、すげえよな!ウィンナーの切り方も一瞬で覚えただろ?パフェも作れるし」 尊敬な眼差し。 ちょっと、嬉しい。 大人になっても褒められるのは嬉しいものだなって思った。 「宙ちゃん、夕方くるように言ってください、パフェ作るの手伝って貰うので」 「えっ?俺が手伝う!!」 伊佐坂はまた、ギュッと椿屋の上着を掴む。 わざとか? このあざとさはわざとだろうか? 可愛く上目遣い。 「じ、じゃあ、お願いします」 椿屋の言葉にニコッと微笑む伊佐坂。 あー、なんでこう、一々可愛いんだろ?この人は……。 伊佐坂がギュッと今度はしがみついてきた。 「椿屋といると楽しい」 何これ?ご褒美? 「ありがとうございます」 「エッチも上手いし……」 伊佐坂は目の前で目を閉じた。 まるでキスして?って誘うように。 「ちょ、昼間っから盛らないで」 ああ、やばい!!あんなに可愛い姿見た後に変な事なんてできない……。 「……椿屋……俺、手伝ったよ?買い物とか」 閉じていた瞳が開かれて椿屋を見つめる。 「ご褒美欲しいな?」 伊佐坂の手は椿屋のシャツをまさぐり、中へと入ってくる。 「……だめ」 一応、拒否してみる。 「椿屋……」 シャツをたくしあげ、お腹辺りに唇を押し付けてきた。 くっ!!やばい……。 そして、伊佐坂は椿屋が穿いているジーンズのボタンを外し、ファスナーを下ろす。 「ご褒美に……椿屋のしゃぶりたい」 潤んだ瞳。少し興奮したように息が荒い伊佐坂。 椿屋はそれに見惚れる。 その間に下着に手を突っ込まれ、惜しげもなく自分のチンコを外へボロっと出されたのだった。

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