30 / 106

ファはファイト一発のファ!

◆◆◆ 昼前、宙に伊佐坂からLINEがきた。 『椿屋がパフェ作ってくれるからお前も来い』そんな内容。 うひゃあ!!!と叫びたかった宙。 愛の巣にお邪魔してもいいのかしら? ダンちゃんと椿屋さんの愛の巣……あんな事やこんな事……いやああ!!鼻血でちゃう!! 「は、ハルカちゃんそんな頭振り回すと貞子みたいで怖いから止めて」 神田の声がして我に返る。 「あ、すみません」 えへへと照れ笑い。 「どーしたの?何かあった?」 「いえ、うへへへ」 つい、ニヤニヤしてしまう。 だって、あのダンちゃんが特定の人を気に入ったって事だもんね。 宙のニヤニヤは止まらない。 「怖いよ」 神田に怯えられてもニヤニヤは止まらないのだ。 お母さん喜ぶばい! 「神田さん、私、トイレ行ってきます!」 勢い良く立ち上がる宙。 「ああ、はい!いってらっしゃい!」 「ウンコだから長いです!」 余計な一言を発して宙は出て行った。 「ああ、黙っていればあの子可愛いのにいい」 神田は残念そうな顔をする。 ◆◆◆◆ 宙は母親に電話を入れる。 数コールで出てくれた母親。 「お母さん聞いて!やっとダンちゃんに特定の人が」 勢い良く話す。 「えっ?そい本当ね?」 「本当、本当」 「どんな人ね?」 「王子様たい!いつも話す」 「えっ?アンタが写真とか盗撮して送り付けるイケメンの子ね?」 「ちょ、盗撮とか!」 否定するが実際は盗撮なのだ。面と向かって写真撮らせて下さいとは言えない。 「へえ、壇十郎がねえ」 「そう!ダンちゃんが」 「ばってん、良かとね?アンタの王子様やないと?」 「王子様は庶民とは付き合わんもんよ?王子様はあくまでも王子様で、王子様とどーにかなりたいとかそういうんじゃないとよ!憧れたい……イケメンが目の前におったらお母さんだって憧れるやろ?」 「そうやね」 「私はダンちゃんが特定の人を作る方が嬉しいもん」 「アンタ、本当……婚期逃しそうよね?私に似て美人とに」 「ちょっとお!!」 「まあ、私も嬉しいよ、可愛い弟が幸せならね」 「うん!」 宙は心から嬉しかった。 幸せになってくれるならいいなって思う。 ◆◆◆◆ 「はーやーくー夜になれえええ」 伊佐坂は自作の歌を歌いながらパソコンの前にいる。 「なんすか?その歌?」 「早く夜になれって歌」 「……いや、そうじゃなくて……自作ですよね?」 椿屋はモップでリビングの床の掃除をしている。 「夜になったらパフェ食べれるだろ?」 その答えに悶え死ぬってこういう事か?と実感できた。 可愛い……可愛いだろ! 子供か?子供みたいだよな? 嬉しさのあまりに自作の歌作るとか。 子供が良くそれをする。 椿屋も子供の頃に経験があった。でも、大人になってからは無い。 目の前の子供に見えるけど、大人の彼は子供みたいに自作の歌を……。 くそ!!くそ!!! 「わかりました!!2つ作るって言っていた内の1つを今から作ります」 せがまれてもいないのに、しょーがないな?って感じで声に出す。 どうしてもこの人を甘やかしたくなる。 「なに!!本当か?」 伊佐坂は勢い良く立ち上がる。 「はい!苺のサンタも乗せますから」 その言葉であの可愛いパア~と花開くみたいなキラキラな笑顔。 「み、見てていいか?」 「いいですよ?」 伊佐坂は素早い行動でキッチンへ。 何時もはゴロゴロして動かないのに。 椿屋の手も痛みが和らいできたのでパフェくらいでは痛くはならない。 邪魔だから手の包帯を取る。 冷蔵庫から材料を出すと伊佐坂はワクワク顔でその材料を見ている。 こんなにワクワクした顔されたら張り切ってしまうじゃないかよ!ちくしょう! 文句を言いながらも楽しくなっている椿屋。 「なあ?宙にもサンタ作ってやれよな?」 「はいはい」 「あ、あと、ゾウも!絶対に宙も可愛いって言うと思う」 自信満々な顔に女の子もだけど、子供なら誰でもきっと可愛いと言う。それを自信満々で言ってしまう彼が可愛い。 「わかりました!ライオンも犬も作りますよ」 「本当か?椿屋、お前いい奴だな」 ニコッと微笑む伊佐坂。 飾り切りでいい奴とか言うのこの人だけだな?と思うと顔が緩んでしまう。 作り始めると伊佐坂はワクワク顔で見ている。 作るのは苺パフェ。 苺をハート型にしたり。 そして、サンタの形を作る。 顔はホイップを使い、チョコで目と口を書く。 小さいサンタを目の前にした伊佐坂は、 「おおお!!なんだコレ?すげえええ!!」 大きな瞳をさらに大きくして、声まで大きい。 キラキラな瞳。 「可愛いな!」 椿屋を見て極上の笑顔を見せる。 いや、アナタの方が数倍可愛いですよ?と言いたい。言いたいけれど言葉にはしない。 「椿屋はすげえな、可愛いのを簡単に作るし、良く知ってる、俺よりすげえ、知識持ってる」 極上の笑顔で褒められた。マジですか……。 苺のサンタ作っただけなのに。 「先生の方が知識は上でしょ?」 「俺のは本とかで得た知識だけだよ」 「本?」 伊佐坂は小説家だから言葉や漢字、一般常識やらきっと、沢山調べたりしている。 言葉を知らないと綴れないから。 「本では得られない知識の方が多いのに俺は本だけだから、椿屋の方が俺より凄い」 「……先生の小説、読みますけど……俺の知らない言葉とか表現力とか色々感動するものありますよ?」 「本見ればそれくらい得られるぞ?」 伊佐坂は椿屋を見てクスッと笑う。 「椿屋みたいに俺は苺でサンタ作れるとか知らなかったし、ウィンナーもあんなに可愛い動物に変わるなんて知らなかった。まあ、それも本やネット見てたらその内得られる知識かも知れないけど、椿屋の場合はそれを本じゃなくて親から得てるだろ?それは本とはまた違う感情がそこにはあるんだよ。本だと文字だけだからな」 伊佐坂が何を言いたいのか、なんとなくだけれど解る。 本だけでは得られない知識もあるから興味ある事には積極的になりなさいと小学生の頃、先生に言われた。 それを伊佐坂は言っているのだろう。 「椿屋は俺の知らない事を知ってて、椿屋が知らない事を俺は知ってる、面白いよな」 「俺が知らない事……」 ああ、沢山あるな。って思った。 「うん、アナニーとか、チンコ突っ込まれると気持ちいいとか……突っ込む側の気持ち良さはもう知ったよな?」 ……そっちか、オイ!!! ああ、これさえ無ければ。 顔と合わない台詞。まあ、それも伊佐坂なのだけど。

ともだちにシェアしよう!