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2話

◆◆◆ 苺パフェが完成すると伊佐坂は「おおお!!凄い、苺パフェ!店とかで食べれるやつやん!」なんてテンション上がりまくり。 「写真撮る!」 スマホで何枚か写真を撮る。 「勿体なくて食べれないな」 椿屋を見てニッコリ。 あーーー、あー、なんだよ、もう、なんなんだよ!この人の可愛さは。 涙出そう。 「食べて下さい、アイスも入っているから溶けてしまう」 「永遠に残しておきたいな……あ、だから食品サンプルってあるのかな?」 まるで凄い事分かっちゃった!みたいなドヤ顔をする伊佐坂を衝動的に抱きしめたくなった。 「苺ってさ、色と形だけでも可愛いのにもっと可愛くできるんだな。それを知っている椿屋は本当、天才」 スプーンを手にすると上の生クリームをパクリ。 苺を食べるのかと思ったけれど、食べ始めた彼を見ていると苺は避けている。 嫌いとかではない。 良く良く思い出してみると、彼は自分が好きなモノは後から食べるタイプのようで、残しているのだ。 特にサンタを上手に避けて食べている。 何?もう!何?このあざとさ?わざとだろ?と椿屋は思う。 しかも食べている間はずっとニコニコ。 美味しい顔ってどんな顔?そんなフレーズが過ぎる。 きっと、こんな顔だ。 ニコニコして、楽しそうで、美味しそうに食べる。 作りがいがある。 なんなら、もっと、作ってあげたいな?って思う。 「伊佐坂先生って甘いモノ好きですよね?」 何か話していないと抱き締めてしまいそうで話し掛ける。 「ん?俺は美味しいモノが好きなだけ。辛いのもいける」 「へえ、……あ、お酒飲みますもんね」 「なんだソレは?酒飲みイコール辛い物っていう知識はいただけないな?酒飲みはツマミは何でもいいんだよ!悪酔いと肝臓悪くしない為に何かと一緒に飲むだけだ!」 容器の中は苺だけになっていて、それをゆっくりと食べている。 一気には食べない。本当に惜しむように食べている。可愛いな……と彼の行動から目が離せない。 「それって酒飲みの名言ですか?」 「どうだろ?お前って自分の限界がどこまでか知ってるか?」 「お酒ですか?社会に出てから悪酔いするまではまだいっていないです。俺、飲み会あまり出ないですし」 「出ないのか?日本ってさ、酒付き合わないとダメ人間みたいに思われるだろ?どうやって断ってるんだ?」 「今、強要するとネットに書かれるから相手も用心しているみたいで、断っても言われないです」 心の声が聞こえる椿屋は彼らの腹の内を良く分かっていた。 一応、飲み会には誘われるけれど、『女の子みんな、椿屋んとこ行くから面白くないんだよねえ』とか『あ、強要したらネットに書かれるかな?』とか……なんか、探り、探りで皆、誘っているのだなって思った。 全て、腹の中分かったら返って揉めないんじゃないか?とさえ思える。 「へえ、俺は作家友達ってほぼ、いないからな」 「えっ?交流会とか出版社でのパーティあるじゃないですか?」 「……お前、そこで俺と会った事あるか?」 「……あ、」 無いや……そうだよ。俺、この人の顔を知らなかったんだ。 「確かに出て下さいって言われるけどな、全部断ってる……締切って言えば相手は引くしな」 「出ないのは面倒臭いからですか?」 「分かってんじゃん」 伊佐坂はスプーンで苺サンタをすくって、じっーと見ている。 「なあ?パーティとかにこういうの出る?」 「いや、見たことないですね」 「じゃあ、いいや行かなくても」 「えっ?」 「こんな可愛いのが沢山並ぶなら見てみたいなって思った」 きゅん!! 椿屋の胸が一瞬だけ、きゅん!!ときた。 なんだよ、もう!可愛いじゃん! 「もっと、高級な食事でますよ」 「高級な食事より、俺は椿屋が作る苺サンタとかリンゴのうさぎとか飾り切りとかがいい」 伊佐坂はサンタをパクンと食べた。 きゅん!!をマッハで通り抜け、ずきゅーん!!と狙い撃ちされてしまった。 今、即死状態。 あー、あー、あー、俺をどうしたいんだよ?この人。こんなに俺を喜ばして!! 「ごちそうさま!椿屋、また作ってね」 ニコッと天使の微笑み。 天使の微笑みいただきました。もう、死んでもいいかも知れません。 なんぼでも作っちゃる!! もう、張り切るしかないだろ?この天使を喜ばせる事が出来るのなら。 ◆◆◆◆ 夕方……いや、もう、夜になった頃、伊佐坂の部屋のチャイムが鳴った。 宙だ。 彼女が来る前に伊佐坂とパフェを作った。 伊佐坂はサンタを作りたがって、それはもう可愛らしかった。 「椿屋、みてみて、可愛くできたあ!」 極上の笑顔。 「上手ですよ?」 「本当か?」 嬉しそうな伊佐坂を見れて、もう胸いっぱいだった。 伊佐坂がドアを開けに行った。 『すごーい甘い香りするうう!!苺?苺かな?』 宙のテンション上がった声が部屋に響いた。 相手のテンションが高い時、結構大きな声で聞こえてくる。 なので、彼女のテンションはMAXなのだろう。 『やーん、ドキドキする!ダンちゃんの愛の巣に私、お邪魔してる』 そのテンションMAXな声と共に宙と伊佐坂登場。 「こんばんはハルカちゃん」 「つつつ、椿屋さん、こんばんは!!」 『ひゃあ!こんばんはとか!笑顔が眩しいっす!』 心の声がダダ漏れなまま、深々と頭を下げる宙。 「ハルカちゃん、パフェだけでいい?晩ご飯は?」 「めめめ、滅相もございません!パフェだけで充分でござる」 『ござるってなに?忍者なの私?』 緊張のあまり、変な語尾になった宙。 「宙、お前、ハットリくんか?」 ぶはっ、と笑う伊佐坂。 「緊張するじゃんか!」 宙は顔が真っ赤だ。 「宙、ほら、見ろ!可愛いぞ!」 伊佐坂はパフェを彼女の前に置く。 「きゃあ!!なにこれ、ばり可愛い!」 『サンタだ!サンタがいる!すごかあ!』 宙も目がキラキラだ。 成程、伊佐坂が言う通り好きみたいで良かったと椿屋は思った。

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