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3話
「椿屋は天才だと俺は思う」
パフェを食べながら伊佐坂は宙にそう言う。
「可愛いのを作れるから?」
『ダンちゃん可愛い!!そんなに椿屋さん事を……』
話を聞きながら返事をする宙の心の声も同時に聞こえてくる。
そんなに椿屋さんの事……何?何を言いたいんだよおお!!と突っ込みを入れたいがグッ!と我慢。
「ソーセージで象も作れるし、チューリップも……すげえよな。俺達作れないもんな」
「うん……あっ、ちょっ、ダンちゃん止めて私まで仲間みたいに入れるの」
同意して直ぐに否定。だって、女の子なのに料理苦手だってバレるのは嫌だ。しかも、憧れの椿屋。
「椿屋はお前が作れないの知ってる、俺がバラしたから」
恥ずかしがる乙女の心を無視するかのような発言の伊佐坂。
「ダンちゃん!!」
『ばか!!ばかあ!!恥ずかしくて死ねる』
宙は椿屋をチラリと見て顔を赤める。
「俺は正直者だからな」
何故かドヤ顔の伊佐坂。
「こういうのは正直者でなくて良かとよ!」
顔が真っ赤な宙は可愛いと椿屋は思う。
こうやって並んで2人を見るとどことなく似ているのに気付く。
伊佐坂も宙も顔立ちが整って可愛い。
宙は会社の野郎共から人気があるし、男性作家にも可愛いから担当に!とかお願いされたりしたと聞いた。
「ハルカちゃん、伊佐坂先生の事、ダンちゃんって呼んでるんだね、叔父さんって呼ばないんだ」
「ダンちゃんはダンちゃんって感じですもん。それに叔父さんって呼ぶと怒るんです」
『見た目、私より若いんだもーんダンちゃん』
心の声も同じで安心する。神田もそうだし、心の声と言っている事がズレていない人は珍しいし、好感が持てる。
「当たり前だろ?なんか、オッサンって呼ばれてる感じがしてヤダ!」
伊佐坂と宙と交互に見ると伊佐坂が年下に見えてどちらかと言えば宙が叔母みたいに見える。
アンタ、どれだけ童顔なんですか?って言いたい椿屋。
「ハルカちゃんのお母さんがお姉さん何ですよね……お姉さんも先生みたいに童顔なんですか?」
椿屋の質問に伊佐坂と宙は顔を見合わせる。
『あー!!どうだろ?若く見えるけど、若作りだし、ダンちゃんの事羨ましく思ってたしな』
宙の心の声が聞こえてくる。
若作り……でも、若く見えるって事かな?
「姉ちゃん元レディースの頭だったしな、美人でスタイル良かったから男達は召使い状態だったなあ」
「は?元レディース?」
伊佐坂の言葉に驚く椿屋。
「うん、レディースの頭。喧嘩はすげえ強かったな……」
「お母さんたまにヤンキー座りとかやっちゃうし、トイレで煙草吸うクセ抜けないし」
『お父さん……たまにボコられてたしな』
心の声に椿屋はひいいい!!!と悲鳴をあげたくなった。
『あ、そうそう、お母さんダンちゃんと椿屋さんの事嬉しそうだったな』
「は?」
ハルカの心の声につい、反応してしまう椿屋。
「えっ?トイレで煙草吸うの苦手ですか?」
心の声が聞こえているとは知らない宙は椿屋の驚いて「えっ?」と短く返事をしたのを煙草の事だと思う。
「えっ?いや……元レディースって凄いなって……ハルカちゃん……えっとさ、もしかして……お母さんに俺と伊佐坂先生の事何か言ったりした?」
こ、これはヤバイ……家族公認にまでなってしまやーん!!
椿屋は焦る。
「あ!!はい」
宙に即答され、俺、終了的な?なんて身体が震える椿屋。
「えっ?マジかよ!姉ちゃんに言ったのか」
「えっ?ダメだった?」
嫌そうな伊佐坂。
俺だって、嫌だよ!!と凄く言いたい。言いたいが言えない椿屋。
「姉ちゃん、根掘り葉掘り聞いてくるからうぜえんだよおお!!」
「あ……そうだったね。ごめん……私も嬉しくてつい」
反省顔の宙。
『ダンちゃんが楽しそうな顔を久しぶり見たし、お母さんもいつも心配してるもん、安心させてあげたいじゃん』
宙の心の声。
彼女はいつも、伊佐坂を心配しているようだ。
親の気持ち……怒っている時の本当の声を聞いた時とか凄く反省した。心の声が聞こえるとちゃんとした親心が見える。
宙もそうだ。本当に伊佐坂を心配している。
いい子だなって思う。
「その内、台風が来るかもな」
伊佐坂は意味深な事を言ってパフェを食べている。
「なあ、明日は何作ってくれんの?」
「へ?」
「明日も可愛いの作ってくれんだろ?」
ニコッと笑う伊佐坂。
くっ!!可愛い……。
椿屋は伊佐坂の笑顔に弱い。
「はい」
「えっ?いいなあダンちゃん料理出来る彼氏居て」
か、彼氏!!違う、違うんだああ!!
訂正をしたいがエッチな場面をバッチリ見られているから何を言っても無駄。
「宙の分も作ってくれるよ」
おおお、お前、また、何勝手な事をおお!!
伊佐坂へ視線を向けるとニコッと微笑まれた。だから、つい、ニコッと笑ってしまった。
「ほら!作ってくれるって」
「ほ、本当ですか?椿屋さん!」
宙の瞳はキラキラ。
ああ、そんな目で見るなあ!!
俺は弱いんだあ!その目に……。
「うん、いいよ、ハルカちゃんさえ良ければ」
つい、返事をしてしまった。
くそ!!明日は何を作ろうか?
後でパソコンを見よう……と思う椿屋だった。
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