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4話
◆◆◆◆
ハルカは長居はしなかった。
『あとはお若2人で』
的な事を心で呟き帰って行ったのだ。
気をきかせたつもりなのだろう。なんせ、彼女の中では伊佐坂と椿屋は付き合っているのだから。
でも、叔父が男と付き合うとか抵抗ないのかな?
いや、そもそも、椿屋にも理解を示した宙。
偏見とかそういうのはもっていないようだ。
片付けしようとすると伊佐坂がシンクへ持って行ってくれた。
何?明日雨?いや、台風?
そういや、自分で台風来るな?って事を言ってたな。と椿屋は思った。
「今日はありがとうな……宙も喜んでた」
「えっ?あ、はい……どういたしまして」
なに?本当に怖いんだけど?いつも、面倒くさいって自分でコーヒも淹れないのに。
「明日……楽しみだな」
ニコッと笑う伊佐坂。
「お前が来てくれて嬉しい。こんな風に美味しいモノとか可愛いモノを見たり食べたりできるから」
鼻血が出るかと思いました。 by椿屋。
えーー!!もう何だろ?この天使ちゃんは。
「あ、明日!!俺、もっと美味しいもの作りますから!」
つい、張り切って言ってしまった。
「本当か?」
パア~とあのキラキラな笑顔。
「はい!今からパソコンで美味しいモノ検索します」
「椿屋……お前って奴は!!」
伊佐坂はぎゅうと椿屋を抱き締めてきた。
「なあなあ、苺サンタみたいな可愛いの他にもあるのか?」
椿屋を見上げて子供みたいに聞いてくる。
「い、一緒にみますか?」
「うん!!!」
はい!良い返事です!と思わず言いたくなった。
椿屋は伊佐坂とパソコン前まで移動。
そして、2人でスイーツを検索する。
可愛いのが結構ある。
うさぎのマカロンで手が止まる。
マカロンも確か作れるよな。
「うさぎマカロンとかどうですか?」
「えっ?マカロンって家で作れるのか?」
「作れますよ?」
「すげえ!!お前、本当、すげーな!!」
伊佐坂はテンション上がり気味に背中をバンバン叩く。
「マカロンとか店でしか作れないものだと思ってたよ」
「じゃあ、明日はマカロンでいいですか?」
「うん!!」
満面の笑みで返事する伊佐坂。
天使の笑顔、いただきました!!!
「楽しみだなあ……ワクワクして寝れねえなあ」
ワクワク……かい!マカロンでワクワクして眠れないとか遠足前の子供みたいで可愛いな。
「遠足前の子供みたいですね先生」
「へ?」
「遠足前って妙にワクワクして早く明日になれって思ってましたもん」
「……遠足」
「そう遠足」
「…………」
伊佐坂は黙ってしまった。椿屋的には「おお!!確かにそうだな」って返ってくると思ったのに。
「遠足もしかして嫌いでした?」
伊佐坂は面倒くさがり屋だからもしかして、行ってないとか?でも、学校行事だからそうそう何回も休めないもんだよな?
そんな事を考えていると「遠足ってそんなワクワクするもんなんだ」元気ない声で返事がきた。
「……そうですけど……先生って遠足は?」
「行った記憶ないんだよな。小さい時は喘息とか持ってたから親が遠足は休ませてたし……後は色々あって行けなかったからさ……そうか、ワクワクするものなのか」
あのキラキラした笑顔が消えてしまった。……聞いてはいけない事を聞いてしまったのだなと椿屋は後悔した。
「あ!!あの、ハルカちゃんとかが休みの時に遠足いきません?遠足というか何だろ?ピクニック?俺、お弁当作りますから」
「えっ?」
「先生が好きなものいっぱい入れますよ?」
「遠足?」
「そう!遠足……ここら辺りには小さい公園しかないから車出します」
伊佐坂の目が少しキラキラしてきた。
「う、うさちゃんリンゴもちゃんといれますよ!あと、オヤツ買いに行きましょう!遠足はオヤツ買いに行くのが楽しかったんで」
また、キラキラとした目で椿屋を見る伊佐坂。あと少し!あと少しで笑顔になってくれるはず。
「オヤツはえーと、大人だから1000円までかな?あれ?多すぎる?300円じゃ消費税が邪魔してあまり買えないしな」
あと何を言えば笑顔にできるだろう?椿屋は必死に考える。
色々考えている椿屋の身体にドンッと衝撃がきた。
伊佐坂が抱き着いてきたのだ。
ぎゅうと椿屋を抱き締めて「椿屋、お前、本当いい奴だな」とニコッと笑った。
やった……笑った。
「遠足行きたい」
伊佐坂は椿屋を上目遣いで見上げる。
「はい……いきましょう……」
上目遣いは照れる。笑顔にはしたいけれど、こうやって密着して上目遣いされたらおかしくなりそう。
「明日はうさぎマカロンだよな?」
「はい」
「椿屋ってうさぎ好き?」
「はい……先生もでしょ?」
「うん、可愛いよなうさぎ」
ニコッと可愛いく笑う伊佐坂にホッとする。
そして、伊佐坂は椿屋から離れた。
離れられると……何故だろう寂しくなる。
もうちょっと……抱き着いていてもいいのに。とかつい、思ってしまった。
「なあ、椿屋……こういうの好き?」
伊佐坂はパソコンの画面をスイーツから可愛い下着へとクリックする。
「へ?」
何が好き?と画面を見るとフワフワのうさぎミミと下着一式。
パンティには丸い尻尾つき。
「嫌いじゃないですけど」
「じゃあ、決まり!」
伊佐坂は画面をクリック。
「椿屋が代金払えな」
「はっ?!!」
何を言っているんだ?と伊佐坂を見る。
「俺の下着ダメにしただろ?買ってくれるって言ったよな?」
「あっ……」
そうでした。
「届いたらお前払えよな」
ニヤニヤする伊佐坂。
「わかりました……」
すっかり忘れていた。
うさぎミミと下着……。画面を見ながらそれを伊佐坂が着ているのを想像する。
……やばっ!!ばり似合うやん!!絶対に似合うやん!!
椿屋はちょっと楽しみになってしまった。
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