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2話
◆◆◆◆
「神田さん、椿屋って何時まで休みなんですか?」
他の男性スタッフに聞かれた。
「何で?」
質問を質問で返す神田。彼は何時もこんな感じ。
「いや、アイツ居ると仕事捗るというか……女の子が用も無く来るというか……その他モロモロで……その……」
「まあ、確かに女の子は来るな……っていうか、自分の仕事は自分で片付けろよ?」
「な、何言ってんですか!ちゃんとやってますよ?」
笑って誤魔化すスタッフはきっと椿屋に仕事を手伝って貰っている。神田はそう感じた。
「椿屋は怪我しちゃってるからな、あと、アイツは伊佐坂先生のお気に入りになっちゃったから離して貰えないぞ?」
「伊佐坂先生のお気に入りですか?えっ?伊佐坂先生って男性ですよね?」
このスタッフも伊佐坂を見た事はない。
なんせ、外に出たがらないし、編集部に来た事は過去、1度だけあった。後はこちら側が行くというスタイル。
「うん、男だよ?それが?」
「……お気に入りっていうから……何か……その」
神田は目の前の男が何を言いたいのか予想はついた。
たまに作家と編集で色恋沙汰があったりするから。
まあ、人間、ずっと一緒にいると勘違いも起こるし、この人は特別な人かも?って錯覚にも陥るものだ。
「椿屋は気が利くし、色んな面で気に入られちゃうんだよ、特に年上にはアイツ、人気あるんだよ。まるで心読めるんじゃないか?ってくらいにやって欲しい事、言って欲しい事、色々と凄い……お前も実感してるから椿屋が何時まで休むのか聞いてるんだろ?」
「はい……そうです。そうですよね、アイツ、アドバイスとか超上手くて……言って欲しい事を言ってくれるから」
なんか、恋する乙女のような顔をして椿屋を褒めるから、……アイツ、男にもモテる男なんだなと神田は感心した。
「まあ、とにかく、仕事溜まってるのなら早くやってしまえよ。なんなら俺が」
「あ!いえ、大丈夫です」
神田の親切心を断り、男性スタッフはそそくさと戻って行った。
ちえっ、俺だって色々とアドバイスも仕事も……神田は少し寂しくなってしまった。
まあ、俺も椿屋を頼ってるしなあ。
……っていうか、椿屋……イチャこらやってんのかな?先生と……。
先生と椿屋……。
あの2人の絡み、腐女子見たら喜びそうだよなあ。
神田は考える。
伊佐坂先生って普通に男女の恋愛小説書いてるけれど、男とイチャこらする感じだもんな。
って、事はBLも書けるという事だよな?
神田は思い付いた!!と言わんばかりに手のひらと拳をポン!と重ねた。
新しい雑誌の連載、伊佐坂先生のBLで決めた。
官能小説もあの人なら超エロく書けそうだしな。
よしよし!!じゃあ!会議開こう!!
神田はご機嫌でどこかへ電話を掛け始める。
◆◆◆◆
うーん、材料足りないかも……とスイーツを作りながら考える椿屋。
スイーツ作りながら思ったのはそれに似合う食器がない事。
パフェ用の器は買ったけれど、小皿とか大皿とか、ゼリー入れる器とか欲しいかも。
スイーツを置く食器は重要だ。なんせ、さらに美味しく見えるのだから。
材料買うついでに食器も買おうかな?と財布を見る。
ぐぬぬ!金が……。
食事を作る材料費とかパフェの器とか買ったので残金が少ないのだ。
カード使うかなあ……。
なんて、悩んでいると電話が鳴る。
表示は神田。
なんて、タイミングだ!!材料買わせよう……。
そんな悪魔な事を考えながら電話に出る。
「椿屋あ、今、エッチな事はやってる?」
「は?」
思わず切ろうかと思ってしまった。
『若いよなあ、いいよなあ!俺なんて、最近性欲無くなってきてるからな』
そんな心の声も聞こえ益々切りたい。
「やってません!!」
強めに言う。
「そうか、あのさ、今から土産持って行こうと思うんだけど、先生って何食べたい?」
ラッキーと思った椿屋。
「今から言う材料買ってきてください!あと、下着」
「は?下着?先生の?お前……」
『お主もエロよなあ』
心の声とダブルで聞こえた。
「着替え持たないでここにいるので!」
「取りに行けばいいじゃないか!」
「ちょっと、事情がありまして……ノーパンなんで」
「は?服着てないのか?この、裸族め!」
「着物着てます」
「ああ、着てるのか」
『なんだ、着てるのか……裸見れるかと思った』
何やら、危険な心の声も聞こえた。
「なので下着お願いします」
「分かった」
神田に欲しい材料も言って電話を切る。
買いに行かずに助かった……なんせ、ノーパン。
分からないだろうが変質者な気分になるのでホッとした。
そして、振り返るとそこに伊佐坂が居て「うわあ!」と驚いて声を上げてしまった。
「椿屋……真っ裸で居ても良かったんぞ?」
会話を聞いていたのかニヤニヤ笑う。
「……アナタは服着てください!神田さんが来ます」
目の前の伊佐坂は素っ裸だった。
「何だよ?照れてんのか?激しい野獣なクセに」
伊佐坂は椿屋に抱き着く。
「そうですよ!!目のやり場に困ります!」
「へえ、素直じゃーん」
伊佐坂は椿屋を見上げてニコッと笑う。
本当、口と容姿が面白いくらいに合っていないよなこの人……。
「とにかく服着ましょう」
「抱っこして連れていって!」
「はあ?歩いてくださいよ!」
「お前が激しくしたからダルイんだよ」
その言葉で椿屋はベランダでの出来事を一気に思い出して顔が熱くなった。
「へえ……真っ赤。椿屋って本当に最高」
伊佐坂は嬉しそうに笑う。
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