77 / 106

25話

◆◆◆◆ 「で?どこ行くんですか?」 神田の車に乗り込んだ伊佐坂と椿屋。 後部座席に仲良く乗っている。 「えっと、1番近いドンキかトイザら〇」 「えっ?ドンキはともかくトイザら〇?」 神田は後ろをチラ見する。 「綿あめ作るんです」 「綿あめ?」 「すげーよな、家で綿あめ作れるらしーぜ?」 ワクワク顔の伊佐坂。 「その機械売ってんの?」 「売ってます」 「へえ」 『先生の為かな?椿屋め!!こんちくしょう』 へえ……の後に聞こえてきた心の声。 何がこんちくしょうなのか椿屋には分からない。 「じゃあ、行きますよ」 神田は車を走らせる。 「音楽聴きます?」 と神田はアイドルの曲をかける。 「昭和のアイドルかよ」 伊佐坂が呟いたようにかかった曲は昭和のアイドル。 「俺の青春時代!!綿あめ……夏祭り行ったなあ」 神田はしみじみとした顔をしている。 『初体験もその頃……うへへ』 いらぬ、心の声が聞こえて椿屋は複雑。 夏祭りでやったのかよ?と思った。 「夏祭り……面白いのか?」 真顔で椿屋に聞く伊佐坂。 「面白いですよ!花火大会とか……俺は福岡出身なので放生会とか……あ、これは秋か」 「知ってるよ、放生会……行ったことないけど」 「先生って夏祭りとか行かなかったんですか?」 「行った事ない」 「えっ?子供の頃も?」 「ねーよ!花火ならうちのマンションのベランダから見える。何も蒸暑い中、人混みの中で見るよりも涼しい部屋で見ればいーじゃん」 「まあ、確かにクソ暑いし……人は多いし」 椿屋も見れるものなら涼しい部屋でみたい!と思うけれど、子供の頃は夏祭りが大好きで両親と一緒に行った。 少し大きくなると友達と。年頃になると彼女と……。 暑くて、人混みにイライラしたけれど、それでも楽しかった。 金魚すくいや、りんご飴……綿あめ。 色んな出店の食べ物を片っ端から食べたいって思った事もある。 夜空に花開く花火は凄く綺麗で……。 「先生……今度行きましょうよ?」 「えー、クソ暑いやん」 「それがいいんですよ!出店の食べ物って特別美味しく感じるんです」 「椿屋が作る飯の方が美味い」 嬉しい返しをしてくれるが「いいじゃないですかあ!1度くらい!」と負けずにアタック。 「お前が浴衣着て……外でセックスしてくれんたら行く」 「先生!!!」 何て事を言うんだー!神田さんが居るのにいい!!と焦る椿屋。 『浴衣でセックス……浴衣でセックス……浴衣で……』 神田が怖いくらいに心で呟き出したので「か、神田さん地方の祭りって何ですか?」と質問した。 「えっ?浴衣でセックス?」 心の声がそのまま出てしまう神田。 「変態め」 言い出したのは自分なのに神田を変態扱いする伊佐坂。 椿屋は早く目的地に着かないかな?と心ソワソワしてしまうのだった。

ともだちにシェアしよう!