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25話
◆◆◆◆
「で?どこ行くんですか?」
神田の車に乗り込んだ伊佐坂と椿屋。
後部座席に仲良く乗っている。
「えっと、1番近いドンキかトイザら〇」
「えっ?ドンキはともかくトイザら〇?」
神田は後ろをチラ見する。
「綿あめ作るんです」
「綿あめ?」
「すげーよな、家で綿あめ作れるらしーぜ?」
ワクワク顔の伊佐坂。
「その機械売ってんの?」
「売ってます」
「へえ」
『先生の為かな?椿屋め!!こんちくしょう』
へえ……の後に聞こえてきた心の声。
何がこんちくしょうなのか椿屋には分からない。
「じゃあ、行きますよ」
神田は車を走らせる。
「音楽聴きます?」
と神田はアイドルの曲をかける。
「昭和のアイドルかよ」
伊佐坂が呟いたようにかかった曲は昭和のアイドル。
「俺の青春時代!!綿あめ……夏祭り行ったなあ」
神田はしみじみとした顔をしている。
『初体験もその頃……うへへ』
いらぬ、心の声が聞こえて椿屋は複雑。
夏祭りでやったのかよ?と思った。
「夏祭り……面白いのか?」
真顔で椿屋に聞く伊佐坂。
「面白いですよ!花火大会とか……俺は福岡出身なので放生会とか……あ、これは秋か」
「知ってるよ、放生会……行ったことないけど」
「先生って夏祭りとか行かなかったんですか?」
「行った事ない」
「えっ?子供の頃も?」
「ねーよ!花火ならうちのマンションのベランダから見える。何も蒸暑い中、人混みの中で見るよりも涼しい部屋で見ればいーじゃん」
「まあ、確かにクソ暑いし……人は多いし」
椿屋も見れるものなら涼しい部屋でみたい!と思うけれど、子供の頃は夏祭りが大好きで両親と一緒に行った。
少し大きくなると友達と。年頃になると彼女と……。
暑くて、人混みにイライラしたけれど、それでも楽しかった。
金魚すくいや、りんご飴……綿あめ。
色んな出店の食べ物を片っ端から食べたいって思った事もある。
夜空に花開く花火は凄く綺麗で……。
「先生……今度行きましょうよ?」
「えー、クソ暑いやん」
「それがいいんですよ!出店の食べ物って特別美味しく感じるんです」
「椿屋が作る飯の方が美味い」
嬉しい返しをしてくれるが「いいじゃないですかあ!1度くらい!」と負けずにアタック。
「お前が浴衣着て……外でセックスしてくれんたら行く」
「先生!!!」
何て事を言うんだー!神田さんが居るのにいい!!と焦る椿屋。
『浴衣でセックス……浴衣でセックス……浴衣で……』
神田が怖いくらいに心で呟き出したので「か、神田さん地方の祭りって何ですか?」と質問した。
「えっ?浴衣でセックス?」
心の声がそのまま出てしまう神田。
「変態め」
言い出したのは自分なのに神田を変態扱いする伊佐坂。
椿屋は早く目的地に着かないかな?と心ソワソワしてしまうのだった。
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