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27話

「なあなあ、今夜は流しそうめんとかき氷と綿アメに決まりだな」 子供みたいにはしゃぐ伊佐坂。 「その栄養が偏った夕飯は却下です」 椿屋は荷物を手に駐車場まで歩く。 「えー、やだやだー食べるうう」 なんだその可愛い駄々のこねかたは!と椿屋は言いたい。 拗ねた顔も可愛い。ワガママをつい聞いてしまう馬鹿親の気持ちがなんとなく分かる気がする椿屋。 「だ、ダメですからね!でも、綿アメは作ります。いっぺんにやっちゃうと楽しみが減っちゃいますよ?」 子供に言い聞かせるように言葉を選んでいる時点で伊佐坂に負けている。 彼は大人なのだからビシッ!と言ってやっていいのだ。 「楽しみが減るわけねーだろ!アホか椿屋」 今まで可愛く駄々をこねていた伊佐坂は真顔で返す。本当、これさえなければ。 「楽しい事をいっぺんにやるんだから楽しみは倍だろーが!」 「それはそうですけど……お腹壊しますよ」 「宙の料理よりマシだと思うし、アイツのお陰で多少のモノ食っても平気になった」 それは免疫がついた……と言いたいのだろうか?どんな料理を出したらそうなるのか…少し興味があるが食べたいとは思わない。 駐車場について、荷物を中へと入れ込む。 神田をチラリと見る椿屋。 彼の心の声で何を交換条件に出されたのか知りたいのだけど、ずっと、心の声は同じ歌をうたっているのだ……。 さっきまで車の中でかかっていた懐メロ。 神田は上機嫌なので悪い条件じゃなかったのだろう。だから、余計に気になる。 車に乗り込み走り出す。 「あ、椿屋、引越しの話は先生から聞いたか?」 「えっ?聞いてませんけど?」 「運送会社見つけたから引越しは3日後だ!明日、手伝ってやるから荷物まとめろよ、ダンボールも手配済みだ」 椿屋はチラリと伊佐坂を見る。 また、神田さんに頼んだんだな……本当、神田さん可哀想だ。 「ほんと、俺の意思は無視ですよねえ」 嫌味風に言ってみたところ、嫌味には通じない。 「お前、俺の所有物だからな!」 「俺はモノではありません!」 「じゃあ、ペット」 「はあ?」 さらにムッとくる椿屋。 「椿屋は恋人って言われたいのかな?」 『可愛い奴め』 神田の言葉と心の声にピクリと反応する椿屋は 「ち、違いますよ!」と否定。 「ほー、そうかそうか、それは悪かったな」 ニヤニヤして何やら勝ち誇ったような伊佐坂の顔に敗北した気分になってしまった。 『あー、椿屋は本当可愛いよなあ、ちえっ、嫁と交換したいいい』 神田の心の声。 ああ、そんなに上手く行ってかいのかと気の毒に思った。 「あれ?」 マンションの駐車場に入った時に神田が声をあげた。 『あのグラマー美人は!!』 心の声に思わずそのグラマー美人を探す椿屋。 マンションの入口に女性が立っていて、遠くから見てもナイスバディだった。 「あ、姉ちゃん……なんで?」 「は?」 伊佐坂の姉ちゃんと言う言葉に椿屋は伊佐坂とグラマー美人を凄いスピードで何度も見てしまうのだった。

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