82 / 106
30話
「ぐえっ!」
飛び乗られた椿屋はシーツの中で変な声を上げる。
何に圧迫されているか「お前、顔いいんだからもっといい声出せよ、エッチしてる時みたいな」の声で分かる。
「せ、先生やめてくださいよ」
シーツから顔を出して文句を言う。
「何拗ねてんだ?」
顔を覗き込まれる。
「す、拗ねてません怒っているんです!」
「じゃあ、何で怒ってんだ?」
「せ、先生がお姉さんや神田さんの前でエッチな事言うからです!」
ビシッと言ってやったぜ!と椿屋は思う。
「本当の事だろ?お前がエッチの時は可愛いとか自慢したいんだよ」
「そ、それをやめてくださいって言ってるんです!」
懲りずに伊佐坂の口に手をあてると、また舐められた。
「ちょ、先生!!」
手を引こうとするが手を掴まれた。
「その反応だよ……お前、本当、俺を煽るのが上手いよな?誘ってんのか?ん?」
ニヤリと笑われた。
「さ、誘っていませんし、煽ってもいません!!」
「お前の反応が一々、俺を煽ってくんだよ……ムラムラさせてくの……お前可愛いから」
伊佐坂は手を掴んだまま押し倒した。
「ちょっ!やめ、やめなさい!」
「椿屋……可愛い……顔真っ赤」
上から見下ろされる。
「これは圧迫されているんです!降りてください」
「機嫌直すまで降りない」
「降りないと機嫌が直りません!」
「ワガママな王子様だな」
「ワガママなのは先生です!何時でも、俺が思い通りになると思わないでくださいよ!」
そう言い切った時に伊佐坂にキスされた。
容赦なく舌が侵入されて、顔を背けようとするけれど、……気持ち良くてつい……ついなのだ。
舌を絡めてしまった。
暫くはキスをしてしまった椿屋。
唇が離れ「ほら、やっぱりお前は可愛い」と微笑まれた。
「怒っている顔もカッコよくて好きだけど、そのとろけた顔と困った顔……笑った顔の方が俺は好きだな」
笑う伊佐坂は可愛い。言う事がえげつないけれど、本当に可愛いのだ。
美少女に迫られている……そんな感覚に陥る。
「なあ、機嫌直してさ……綿あめ作ろ?俺、楽しみなんだけど?」
まるで雪だるま作ろ?みたいな子供顔。
ちくしょー!!先生はずるい!!そんな顔したら……許してしまうじゃないか。
「分かりました」
名前通りに素直に言うと「さすが椿屋」とにこぉ!と子供みたいな顔で笑う伊佐坂。
『あれえ?もうラブラブタイム終わりなのか?』
『やっぱ、王子って可愛いわあ』
神田と瞳の声が聞こえてきた。
これは多分……心の声。
ドアの方を見ると隙間が開いている。
「す、隙間……」
椿屋が言うと伊佐坂は彼の上から降りてドアを開けた。
「やあ!どーもどーも!ラブラブタイム終わりですか?」
ニコッと微笑む神田。
「最後までやるかと思っちょったとに」
ガッカリ顔の瞳。
「それは夜のお楽しみなんだよ」
「ちぇっ!!つまんない!」
2人の言葉がかぶった。
「お前らって本当野獣だな……さぞかし、付き合っていた頃は激しかったんだろうなあ」
「SMプレイとかやったわよお、懐かしい」
「瞳ちゃんの女王様姿良かった!」
「変態め……」
「ダンちゃんも王子様と使うなら衣装送ろうか?ムチも」
「……衣装だけでいい。椿屋を叩く趣味はない!痛がる顔よりとろけた顔の方が俺は好きなんだよ旦那にも使ってんの?」
「たまにね」
「宙も可哀想だな……こんな変態夫婦」
「いやねえ、宙は知らないわよ!宙が家を出てからやってんだから」
「あっそ!」
椿屋は会話を聞いて、やっぱ付き合っていたのかと思った。
面白い事に3人会話している時には心の声が聞こえて来ない。
思っている事が全く一緒だからだろう。
「神田さんとお姉さん付き合っていたんですね」
「そうなの」
「そうだよ」
2人の声が面白い程に同時だ。
「ふふ、2人ラブラブね」
『あーん、私もラブラブしたーい』
「最後まですれば良かったのに」
『可愛いよなあ……いいよな…俺もラブラブしたい』
2人の心の声……。欲求不満か!!と突っ込み入れたかった。
「ら、ラブラブじゃあ……ないですから」
一応否定してみた。
「いや、思いっきりラブラブだから!」
『リア充めええ!』
2人の声と心の声は全く同時で……こんなに気が合うのに別れちゃうんだなっ……と椿屋は思ってしまった。
ともだちにシェアしよう!