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2話

そんな思いを巡らせているとは知らない伊佐坂は相変わらずキラキラした目で綿あめが出来ていくのを見ている。 「すげーなフワフワ」 「王子、器用ね……素人がこんなに上手く作れない」 『こりゃ、ダンが惚れるわけよね……』 瞳も丸くフワフワに出来上がった綿あめを見ながら感心している。 聞こえてきた心の声はそれは誤解ですよ!!と言いたいのだがぐっ!と我慢。 「はい、先生」 椿屋は伊佐坂に出来上がった綿あめを渡す。 「すげーずげー!俺、初めて食べる」 ニコニコして綿あめを受け取り眺めている。 ああ、こんな風に喜んで貰えるなら……もっと早く作ってあげれば……なんて、思ってしまう。 伊佐坂はいつも素直に喜んでくれるから何でも作りがいがあるし、作って良かったなって作る側のテンションを上げてくれる。それは彼の優しさなのか……それとも純粋に子供のような部分を持っているのか。……凄くいいなあっと思う部分だ。 「椿屋!俺も食べたい」 『子供の頃以来食べないからな』 神田が嬉しそうに手を上げる。 「私も!あ、お土産に持ってきた黒糖のザラメで作ってよ」 『綿あめ……ダン、夏祭りとか行った事ないもんねえ……きっと、行きたかったよねえ』 瞳の心の声が気になった。 行きたかったよね? めんどくさくて行かないと本人は言っていた。それは大人の伊佐坂の気持ちであって子供時代ってめんどくさいというより、好奇心が先にくる。 何よりこんな風に綿あめひとつで大喜びする伊佐坂が子供が好きそうな食べ物が並ぶ祭りに行かないわけがない。 考えてみるとお弁当もそうだ。 幼稚園とか学校の遠足とか家族で海水浴とかお弁当を必ずどこかで食べるはずだ。 伊佐坂は食べた事もないし、お弁当はリクエストしていいのか?と聞いてきた。それは……作って貰った事がないって事になる。前もふと、そう考えてしまった。 瞳の心の声でその不思議が大きくなった。 「黒糖の綿あめもできんの?」 「そりゃ出来るわよ砂糖だもん」 『ダンちゃん、目がキラキラ……こんなダンちゃん初めて見る……王子に感謝』 伊佐坂との会話は姉と弟らしい会話。瞳の心の声が気になる。 キラキラ……実家ではキラキラしていなかったの? 「じゃあ!次は黒糖!」 伊佐坂は椿屋にキラキラした顔でオネダリ。 「えっ?1個だけですよ?夕飯入らなくなるし、甘い物はそんなにダメです!糖尿になる」 「うっせえ!俺が良いって言ったらいいんだよお!」 俺様な口調なのだが、美味しそうに綿あめを食べているので腹は立たない。 本当に嬉しそうに美味しそうに食べるんだなと伊佐坂を見て思う。 椿屋は神田と瞳の分も作った。 「瞳ちゃんが言うように椿屋上手いな」 『職人か!』 神田の心の声の方に笑いが出そうになる椿屋。 「高校の文化祭とかでもやったし、近所の祭りでバイトした事もあるから」 「へえ、そりゃ凄い」 『椿屋、スペックすげーな』 「ダンちゃん、良いお嫁さん貰ったね」 『ハイスペックよねえ』 やはり、神田と瞳は言う事が似ている。こんなに気が合うのになあ……。今は別の人と結婚……って分からない。と思う椿屋だった。

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