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第4話
三芳が起きたのは、それから数時間後だった。
「え? 俺、今……」
起きた途端に、自分の状況が理解できずに戸惑ってる三芳に眠っていた事を告げると目を丸くした。
「俺がバスタオル掛けても気付かないくらい寝てたよ」
バスタオルを見つめながら何も喋ろうとはしない。
「疲れてたんじゃないのか?」
「何日、徹夜しても寝れなかったんだ。薬もあんまり効かない位だし」
数時間寝ただけだが、三芳はたいそうすっきりした顔をしていた。
次の日。家に帰るなり、母親のいるキッチンへと向かう。
「ただいま。あのさ、今日も昨日と同じ友達の所に泊まるから弁当作って欲しいんだ。二人分」
「二人分? 今夜も泊まるの? 夏休みだからって遊んでばかりじゃだめよ」
そう言う母親には三芳と宿題を一緒にやるのだと説明した。
「三芳って、北郷兼芳の息子なんだ」
「そういえば同じクラスにいるって言ってたわね」
「親父さんとは別に暮らしてて、ハウスキーパーも食事の面倒みてくれないからゼリーとか食ってんの」
すると母さんはたいそう驚いて、そういう事ならと快く弁当作りを了解してくれた。
「それにしても高校生の一人暮らしは大変ね。ご両親離婚されてたものね。お母さん元女優さんじゃなかったかしら」
「何日か、夜泊まりに行こうと思ってるんだけどさ、弁当作ってくれる?」
「お弁当はいいけど、三芳くん迷惑じゃないかしら?」
「宿題教えて貰うんだ。あいつ頭いいから。それに眠れない病気なんだって」
「そうなの?」
「うん。一人だと何日も寝れない事があるみたいなんだ。それで、昨日久しぶりに眠れたみたいで。うちならもっと騒がしいからさ、今度泊まりに来いって言ってみるよ」
すると母さんはクスクスと笑いながら頷いた。
それから数日、夕方に弁当を持って三芳の家に通っていた。やっぱり三芳は俺がいるとよく眠れるらしく、日に日に顔色が良くなっていく。
そしてこの間はうちにも泊まりに来て、弟達や母さんはすっかり三芳贔屓になった。
母さんも三芳の病気の事を心配して、互いの家に泊まり合う事も許して貰い。
そして、今となっては……。
「これ、三芳くん好きだから」
そう言いながら詰めているのは肉じゃがで、最近は夜の弁当だけでなく次の日の朝や昼のおかずなんかもせっせと詰めて俺に届けさせている。
そんな三芳贔屓にちょっとは嫉妬もするけど嬉しくもあって、今日もそれをもって三芳の家に向かった。
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