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第7話

 それから全く連絡がつかないまま約束の花火の日になった。    マンションに寄りインターホンを鳴らしても反応はなく、居るのか居ないのかすらわからない。  もしかしたら祭りに行ってるかもと僅かな望みをかけて神社の境内に向かったが、祭りは賑わっているけど、すれ違うクラスメイトにも三芳を見なかったかと聞いたが誰も見かけていないらしい。  やっぱり来てないのか。  すると、花火の時間を告げるアナウンスが流れる。  やっぱりもう一度マンションの方へ向かってみると、車に乗り込もうとする三芳の姿を見かけた。 「三芳!」  思わず声をかけると三芳は眉をひそめ、足早に乗り込もうとした。 「待って!」  ドアが閉まる直前に三芳の腕を掴んで引きずり下ろす。 「今日、約束してたのは俺だから!」  そう言うと三芳の手を引いて花火があがり始めた神社の方向へ連れて行く。 「離せ!」 「嫌だ!」  腕を振り解こうとするので絶対に離すものかと渾身の力を込めたが、小高い山の上の神社の社に行く途中で腕を振り払われた。  木々の隙間から花火が少しだけ見えて、光るたびに三芳の顔が見える。それは少し疲れているようにも見えてちゃんと寝ているのか心配になる程だった。 「ちゃんと寝れてる?」 「心配してもらわなくていい」 「あの人と会ってるの?」 「笠松には関係ない」  そう言いながら帰ろうとする三芳の腕を掴んだ。 「花火の約束」 「花火なんかどうでもいいよ」 「良くない! 俺はお前が眠れる様に」  すると不機嫌そうに眉を寄せた。 「なぁ、お前にとって俺が寝れないってそんなに重要?」  突き放すような言い方で三芳は冷たい視線を俺に向けながら続ける。 「前にも言っただろ。俺の本当の願いは叶わない」 「でも俺は三芳には笑って欲し……」 「俺の願いはさ!」  三芳は俺の腕を引き、木の幹に押し付けると顔を近付けた。 「俺の願い事なんてお前に好きになってもらう事以外ないって言っただろ! でも叶わないんだ。だからもう放っておいてくれ!」 「叶うか叶わないかなんてわかんないだろ!」  それでも何か言いたげな三芳の事を抱き締める様に腕を回した。 「俺の願い事は三つだ。三芳が眠れる様になる事。三芳が笑ってくれる事。三芳が俺以外と一緒に眠らない事!」  山に隠れた花火があがる音が響く。それに合わせて遠くで歓声も聞こえてくる。  でも、一番大きく聞こえるのは自分の心臓の音だった。

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