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同室者とバケツプリン1
夜の十時を過ぎた頃、同室者が帰ってきた。俺は挨拶しようと、自室を出て彼を出迎えた。
「お帰り」
「………」
でっかいなぁ。
同室者は背が高くて、百八十以上ありそうだ。格闘家みたいにゴツい体してるし。ほんとに高校一年生?
「俺、田村清道。今日から同室だ。よろしくね」
「……チッ」
チッ? え? 今、舌打ちされた?
「わっ」
同室者くんはゴツい腕で俺を押し退けて、自分の部屋に入っていって、バタン! と、わざとらしく大きな音を立ててドアを閉めた。
「……なにそれ?」
俺は呆然としちゃう。俺、なんかした? 挨拶しただけ───あ!
同室者くんのルックスを思い返して、はたと気付く。
髪はグレーアッシュカラーのソフトモヒカン。顔はいかつくて目付きが悪い。服装は黒一色でシルバーのアクセサリーを着けてた。
あれだ。きっと不良だ。
実家のお隣さんちのアツシくんもヤンキーだった。こっちは実に分かりやすい不良で、金髪リーゼントにジャージ姿だ。
ケンカが弱くて、前歯が欠けていて、非常に個性的なルックスだった。
母親同士が仲良かったから、俺とアツシくんもなんだかんだ近所付き合いしてたんだよね。強烈なルックスの割りにアツシくんは平凡な男の子だった。
ケンカで負けただの、女子にフラれただの、愚痴を聞いては励ましていたんだよね。
同室者くんはアツシくんに比べてオシャレなルックスをしているので、不良には見えないけど。
さっきの目線、上から下まで舐めるように人を見るあの威嚇する雰囲気は不良の挨拶的ガン飛ばしに違いない。
「なるほどねぇ……」
俺は反抗期の息子を持った母親の気分になった。
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