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入学式1

 いよいよ入学式だ。  俺とあっくん(高城くんのこと。彼の友達はあっくんて呼んでたらしい。俺は友達として認められたみたいだ)は同じクラスで、席も前と後ろだ。  ショートホームルームの後、体育館に移動した。  校長先生てゆうか学園長ってゆうのかな? やっぱり話長いかなぁ。眠くなるんだよね。  祝辞やらなにやら、ぼけーっと聞いてたら急に周りがざわつきはじめた。なにかなと思って聞き耳を立てると、まるで女子高生みたいな会話が聞こえてきた。 「生徒会会長様だ。かっこいい!」 「素敵……!」 「中等部からずっと抱かれたいランキング一位なんだよね」 「僕、絶対親衛隊入る」  ん? ここ男子校だよね。聞こえてくるヒソヒソ話が女子の会話みたいだ。  俺は高校からだけど、中等部からエスカレーター式で上がってきたやつは上級生のこと知ってるみたい。  俺は壇上に上がった生徒会長を見た。  なるほど、めっちゃイケメンだ。百八十センチを超す長身で、ガタイがいい。芸能人みたいに顔も整ってる。大河ドラマに出てた若手俳優に似てる。  ワイルドな色気があるというか、高校生にはみえないなぁ。  イケメン生徒会長は新入生歓迎の言葉をこれまたイケメンな声でかっこよく、そつなくこなした。完璧じゃん。頭いいんだろうな。  清がこんなに立派になってたら誇らしいだろうなぁ。  思ったよりあっさりと入学式は終わった。  教室に戻ってから、担任の先生の話や自己紹介やらも問題なく終わった。ぶっちゃけこのクラスで問題ありそうなのは、あっくんだけだった。  自己紹介中もクラスメイトを睨みながらだったし、みんな視線を合わせないように下向いてた。先生まで下を向いてたし。  あっくん、やっぱり不良なんだな。仲良くなってたから忘れてたよ。 「それでは、生徒会親衛隊の生徒から説明してもらいます。綾野君、入って」 「失礼します」  呼ばれて教室に入ってきたのは、綺麗な顔をした上級生だった。  逢望学園では学年ごとにネクタイの色が違う。三年生はバーガンディ。二年生はシーモス。一年はネイビーだ。  お洒落な呼び方なんだか知らないけど、ぶどう色、抹茶色、紺色でいいじゃんか。  ネクタイの色はぶどうだから二年生だ。綾野先輩は教卓の前に立った。 「僕は生徒会副会長、加賀美様の親衛隊長の綾野です。君たち新入生に逢望のルールを教えます」 なんだなんだ? 何が始まるんだ? 「まずひとつに、この学園では家柄、成績、容姿などでランク別にクラス分けがされています。君たちはCクラス。最下位ランクです」  おっと。前の席のあっくんの肩がぴくりと動いた。あっくん落ち着いて、と彼の肩を撫でておいた。 「最上位にいるのが生徒会の皆様です」  綾野先輩によると……  金持ち・イケメン・成績優秀の三拍子そろった生徒会メンバーは、この学園では絶対的存在で、教師よりも上だそうだ。  皆、親衛隊と呼ばれる護衛兼ファンクラブ兼雑用係みたいなのがついていて、一般市民が生徒会メンバーに気安く話しかけることは禁じられている。親衛隊に入りたい者は各親衛隊長まで言いに来いと。審査の末、合格なら入隊できるって。  なんじゃそれ???  俺は頬杖をついて、呆れながら話しを聞いてた。  あっくんはイライラして貧乏ゆすりをしてる。俺は時々、あっくんの肩をポンポンしてた。  けど皆、キラキラした目で綾野先輩の話を聞いてる。変なの。金持ちは変わってるんだね。 「そこの君。退屈そうだけど」  急に綾野先輩に指差されてドキッとした。 「ああ? 親衛隊だのなんだの、くだらねぇ事を長々と話しやがるからイライラしてんだよ」  なんだ、あっくんか。いやいや、ほっとしてる場合じゃない。 「あっくん! 先輩にそんな口のききかたしちゃ駄目だよ」 「うるせぇし」 「あっくん。もう高校生なんだよ。恥ずかしいよ」 「………」  あっくんはぶすっと黙り込んだ。  綾野先輩は今度は俺を指差した。 「なるほど、君が飼い主ですか」 「へ? 友達ですけど」 「ちゃんと躾けておくように。もし生徒会の皆様に無礼な真似をすれば……制裁されることもあるのだと理解しておくように」 「制裁だぁ? 上等だ」 「あっくん。どうどう」  俺はあっくんの両肩を押さえて宥める。その間に綾野先輩は教室を出て行った。  なんだかなぁ……めんどくさそうな学校に来てしまった。

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