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意地悪な罠4

 次の日のお昼休み。  誘ってくれた美少年くんとその仲間たちと一緒に食堂へ向かった。  途中で上級生があっくんを引き留めた。 「高城君、教材を運ぶのちょっと手伝ってくれない?」 「あぁ?」  どうも先生に頼まれたらしいけど、上級生は華奢な美少年だ。  あっくんは逞しい不良。力仕事ならあっくん向きだ。 「手伝ってあげなよ。あっくん、力あるんだから」 「………チッ」  あっくんは舌打ちしながら、上級生についていった。  隣にいた美少年が「ほんとに高城君の飼い主なんだね」と呟いたがスルーしとこう。 「ねぇ、田村君。僕らが注文してる間に席取っといてくれない? 」 「いいよ」 「ありがとう。あの中二階の席、あそこ特等席だから。誰にも取られないように座って待ってて」 「わかった」  俺は先に席に座ってようと、中二階へと階段を登った。  その瞬間、周囲がザワッとしたけど、気にせず椅子に座った。  学食はけっこう混んでるっぽいのに、中二階には誰も上がってきてなかった。 広いテーブル。十人は座れそうなのに誰も座ってない。陽当たりもいいし、ほんと特等席だなぁ。  俺はぼけーっと座って皆を待ってた。 「ねえ、なにしてんの?」  声をかけられて見上げれば、階段を上がってきた白メッシュの頭のチャラ男が俺を見ていた。 「あ、友達の席も場所取りして待ってるんです」 「え? マジで? ここ俺の席だよ。おブスちゃん」  おブス?  今、ブスって言った? このチャラ男。  びっくりしてチャラ男の顔をマジマジと見た。  着崩した制服に染めた髪、青いカラコン、ナンバーワンホストかよって感じのイケメンだ。なにやら甘い匂いがするし。 「オレさぁ、可愛い子にだけ優しくしたいの。おブスはどっか行ってくれる?」 「初対面でブスとか、失礼でしょ」  もし俺の清がこんな口の利き方してたら、お尻ペンペンしてやる。  それにあまりにも高校生らしからぬ格好だ。あっくんの数倍ひどい。 「いくら上級生でも失礼ですよ。下級生の見本になるべきなのに。ここは学食だから、皆平等に食事をする場所のはずです」 「……キミさぁ、俺が誰だか知らないの?」  チャラ男くんが目を細めて俺を見た。  しまった。言い過ぎたかな。 「邪魔だ、櫻小路。さっさと座れ」  チャラ男の後ろから、階段を上がってきた生徒がうざそうに言った。 「なんだお前?」 「あっ!」  こいつ、生徒会長だ! 確か大徳寺って名前の。  生徒会のメンバーには関わるなって、親切なクラスメイトがアドバイスしてくれてたよな。  俺の背中をタラリと冷や汗が流れた。 「このおブスが生徒会役員専用の席を陣取ってるのよ。オレの口の利き方が悪いって説教されちゃった」 「確かにお前の口の利き方は下品だな」 「清~、お前まで説教すんなよぉ」  チャラ男が情けない声を出して、じゃれるように生徒会長にもたれかかった。 ───清!? 「き、清って名前なの!?」  まさかこいつが…… 「ちょっ、お、おブスちゃん。誰を呼び捨てにしたかわかってるぅ?」  チャラ男がドン引きしてる。  生徒会長も驚いてる。  周りの空気が異様な緊張感に包まれてることに、俺はやっと気付いた。 「君! 何をしているんだ!?」  その時、階下から慌てて数人の生徒がかけ上がってきた。  あ、親衛隊ってやつだ。  生徒会長とチャラ男に「失礼します」と一礼してから、俺の側まで駆け寄った。 「来い! 君は懲罰部屋行きだ」 「えっ!? なにそれ」  俺は捕らわれの宇宙人みたいに両脇を抱えあげられてしまう。  ざわつく食堂。  冷ややかな眼差しのチャラ男と生徒会長。  親衛隊に捕まってる俺。  ちょっと待ってよ!  なにこれ? どうゆうこと!?  混乱したまま引きずられていると、 「待ちなさい! 彼は僕の知り合いだ」 「お、俺の友達だから、離して」  緊迫した空気の食堂に聞いたことのある声がふたつ、同時に響いた。

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