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初めてのキス2
「加賀美様! お前ッ!!」
瞬間、綾野先輩率いる親衛隊メンバーがバババッと忍者みたいに現れて、俺とあっくんを取り囲んだ。
どんどん状況が悪くなってる気がするんだけど、副会長が冷静な声で聞いた。
「彼は君のなんです?」
「え? 同室者です。あの、悪い子じゃないんです。ただちょっとヤンチャなだけで。ほら、あっくん! 謝んなさい」
「よせよ!」
俺はどうにかあっくんに謝らせようと彼の頭をぐいぐい押さえた。
ほんと、おかんとあっくん状態だよ。
なんだか清の生まれ変わりはあっくんで正解な気がしてきた。
「君は下がりなさい。用があるのは清道だけだ」
「そ、そうだよ。清道はここにいて」
「あぁ!?」
うわぁあ……ほんとに収拾つかなくなってきちゃったよ。
「あの、ちょっと、一旦おちついて……えっ!?」
三つ巴で睨み合う三人を宥めようとしたら、思い切り後ろに引っ張られた。
バランスを崩した俺を逞しい腕が抱きとめる。
「なに……んんっ」
周囲から悲鳴の声があがった。あっくんの怒鳴り声と親衛隊の制止する声。
俺は一瞬なにが起こったのか分からなかったけど……口の中にぬるりと入ってきた物の正体に気付いた。
え? ベロだ。待って、俺───キスされてる!?
「う! ん、ん───ッッ!!」
大きな手で頭を鷲掴みにされて身動きできないまま、ひとしきり唇を貪られた。
ようやく解放された時には息も絶え絶えだ。
「はぁッ……は、なんで?」
濡れた唇でにやりと笑っているのは生徒会長だった。
「お前、気に入った」
なんで? なんでキスされてんの?
ふぁ、ファーストキスなのにッ!
清と同じ名前のやつにキスされるなんて。
「……ふ、ふざけんなッ!!」
「うごッ!!」
思いっきり頭突きしてやった。
「なに考えてんだ!? こんな場所で初対面の男にキスするとか、そんな子に育てた覚えはない! 反省しろッ!!」
「はぁ?」
言うだけ言って、俺は走って食堂から逃げた。
あっくんや春馬くんが何か叫んでたけど、今は無理。あんな大勢の前でキスシーン見られちゃったし。
ああもう早く一人になりたい。
俺は自分のことでいっぱいいっぱいだったので、その後の修羅場を知る由もなかったのだった。
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