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初めてのキス3[side大徳寺]
[side大徳寺]
「てめぇ!! ふざけんなよ! ぶっ殺してやるッ」
俺に殴り掛かろうとしたグレーの髪の一年を親衛隊が五人がかりで押さえつけた。
加賀美は冷ややかな目で俺を見ている。
だがその目の奥には珍しく怒りが渦巻いていた。
「なんの真似だ?」
「お前らが取り合いしてるもんだから面白くなったんだよ。からかっただけだ」
俺は頭突きされた顎をさすりながら笑う。
「き、清道に手はださないで」
書記の春馬がどもりながらも俺に意見した。
ほんとに珍しい。こいつはコミュ障なのに。
さっきのキスはからかい半分だ。
もう半分は、あの一年がこいつらに取り合いされてるのが気に入らなかった。
よってたかって触りやがって……
─────あいつは俺の……なのに。
俺の? なんだってんだ?
なぜ初対面の一年のガキのことが気になるんだろう。
顔も平凡だ。櫻小路がおブスと呼んでいたが、ブスじゃない。
ハムスターみたいな可愛い顔してた。
唇も柔らかかったし……
ハッ! 待て待て、可愛いってなんだよ。
「……興が覚めた。昼はいらない」
階段を下りると食堂にいた生徒達が興味津々にこっちを見ている。
俺がぎろりと睨めば、慌てて目を反らした。
「いいか、今のは忘れろ。ただのおふざけだ」
シーンと静まり返った食堂を後にして廊下に出ると、慌てて親衛隊が追いかけてきた。
それを制止して、俺は一人で生徒会室に向かった。
田村清道か、覚えてろよ。
会って確かめてやる。お前が俺の何なのかを。
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