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制裁1
『清ッ!!』
俺が戻った時には、お屋敷は炎に包まれていた。
お屋敷の中にはまだ清がいる。
召使い達の休憩部屋で昼寝をしていた。
俺は清を置いて、一人お使いに出ていたんだ。
『お願い! 離して! あの子を助けてッ!』
『もう無理だ! 諦めろ、あんたまで死ぬぞ!』
燃え盛る炎に向かって行こうとするのを止められて、俺は声の限り叫んだ。
『離してっ……私はどうなってもいい! お願いあの子を! 清ぃ! 』
「清!!」
俺は泣きながら目覚めた。
何度も何度も見た夢。この学園に来てからは見てなかったのに。
前世で清を失った日の記憶だ。
苦しい。辛い。
男子高生に生まれ変わった今でも、後悔に苛まれている。
転生した清を見つければ、俺の心も救われるのかな?
俺は涙を拭いて、起き上がった。
結局、生徒会メンバーの特等席であっくんもランチするようになった。
最初はピリピリしてたけど、俺が必死で頭を下げると、
「しかたない。番犬の同席も許しましょう」
副会長が最初に認めてくれて、あとはなぁなぁでなんとかなった。
あっくんは特に生徒会長に吠えていて、俺は内心ハラハラしてたけど、さすがこの学園をまとめてるだけあって軽く流していた。
「キヨの弁当は俺んだ。お前らは食うんじゃねぇよ」
「だって庶民の弁当美味しいし~、いただき!」
「あっ、てめぇ!」
相変わらず、俺の弁当はちょいちょいつまみ食いされてる。
春馬くんには俺から餌付けしてるけど。
「春馬くん。きんぴらごぼう美味しい?」
「う、うん」
「お前もしれっと食ってんじゃねぇよ」
「こら! あっくん、春馬くんをいじめるんじゃないよ」
「お前らなぁ……ちょっとは落ち着いて食えよ。清道、注文しろ。俺の奢りだ」
「じゃあ、今日はロールキャベツを」
「キヨ、俺が奢ってやるから」
もうほんとに賑やかすぎる。
まるで幼稚園だ。俺は先生。
けどこのコントみたいなランチ風景が逆に生徒たちからの高感度を上げていた。
近寄りがたい雰囲気が払拭されて、生徒会に対して親近感が持てるようになったって。
それって良いことだよね。
俺は嬉しくなってニヤニヤしてしまう。
「何笑ってんだ?」
「みんなと一緒にいるの楽しいなぁと思って」
「………」
一瞬、皆固まった気がする。なんで?
「ちょっと、おブスのくせに可愛いこと言うなよ」
「キヨは可愛いんだよ」
「き、清道、かわいい」
「食事中です。静かにしなさい」
「なんだ? 加賀美、照れてんのか?」
ああ、平和だ。
俺はほのぼのした気持ちで皆を見ながら、シェフの絶品ロールキャベツをぱくりと食べた。
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