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制裁3
ドガァッと倉庫の扉が吹っ飛んだ。
「な、なんだ!?」
慌てる上級生たちが俺の上から吹っ飛んでった。
殴る音や蹴る音がして、俺は怯えてきつく目を閉じた。
何も聞きたくない。見たくない。きっとこれは夢だ。
自分の体を抱きしめて縮こまり、嵐が去るのを待つ。
しばらくすると静かになった。
「おい」
「ううッ!!」
怯えて暴れ出した俺を宥めるように、大きな手が肩を抱いた。
「大丈夫だ。落ち着け。今取ってやる」
そう言って俺の口の中のハンカチを出した。
「あ……」
「俺は風紀委員長の千石だ。ケガはないか?」
俺を助けてくれたのは、切れ長の目をしたイケメンだった。
この学校はイケメンがたくさんいるなぁ、などとぼんやり考えながら頷く。
委員長はスマホで誰かに電話したあと、俺の方に向き直る
「保健室に連れてってやる。人目につかないルートで行くから大丈夫だ」
委員長はブレザーのジャケットを脱いで俺に被せてから抱き上げた。
俺はお姫様抱っこされて保健室まで運ばれた。
保健室のベッドの上に座らされた時も俺はぼんやりしてた。
衝撃が強すぎて感情がなくなっちゃったみたいだ。
「おい。傷がないか確かめるぞ」
「え、やだッ!!」
あろうことかお尻を確認されそうになって、俺は我に返った。
「されてない! 叩かれただけ!」
「だよなぁ、お前みたいな平凡が襲われるなんざ珍しいしな。美少年を助けてヒーローになってやろうと思ったら、こんな地味男くんだったからがっかりしたぜ」
「あ、あんた最低だ!! めちゃくちゃ怖かったんだぞ!!」
あんまりな言い方に涙がボロボロ零れだした。
悔しい! あんな目に合ったのに、こんなこと言われるなんて。
「怒ってる方がいい。気がまぎれるだろ」
「え?」
委員長はにやっと笑って救急箱を持ってきて隣に座った。
「染みるぞ」と、切れた唇の端に薬を塗った。
少し染みて顔をしかめた。
てきぱきと手当てを済ませて、今度は新しいシャツを俺に渡した。
「ほら。着替えろ」
俺はシャツを受け取って、委員長のシャツも破れていることに気付いた。
「あの、委員長のも破れてますよ」
「あいつら箒で殴り掛かってきたからな。引っかかったんだろ」
「ええ!? ケガは!?」
「してないさ。無敵の風紀委員長だからな」
委員長はガハハと豪快に笑ってシャツを脱いで、新しいシャツを棚から取ろうと俺に背を向けた。
「!! それ、背中の……」
委員長の背中には火傷の痕のような痣があった。
「これか? 別に火傷したわけじゃないんだ。生まれつきなんだよ。セクシーだって言われるんだぜ」
笑いながら振り返った委員長は俺の顔を見て、なぜか固まった。
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