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迷宮1[side大徳寺]
[side大徳寺]
放課後の生徒会室。
「風紀から聞いた。お前が清道を襲わせたんだな」
「………」
千石から清道が襲われたと聞いて血の気が引いた。
それも俺のせいで。
保健室のベッドの上の清道は青い顔で微笑んでいた。
『会長のせいじゃないですよ』
『いや、俺のせいだ』
『親衛隊を放置していたお前の責任だ』
千石の言葉が重くのしかかる。
でも清道は俺を庇った。
『未遂だったし、俺は女の子じゃないから大丈夫。だから気にしないで』
俺は清道を抱きしめたかったけど、抱きしめることができなかった。
千石の言う通りだ。親衛隊なんぞくだらないと放置してきた結果がこれだ。
俺はすぐに隊長を呼び出した。
「自主退学しろ。この学園にもうお前の居場所な無いぞ」
「そんなッ! あなたはっ……! 制裁はこれが初めてだとでも? 知っているくせに……今まで僕が何をしても無関心だったじゃないですか!? 」
「清道を傷付けたお前を許せない」
「なんで、なぜです!?」
……なぜ? わからない。
理由なんてない。俺にとって清道は特別なんだ。
こいつにとっては俺が特別な存在だったんだ。
だからこいつは清道を潰そうとした。
俺は恋なんてしたことがなかったから、今まで他人の気持ちを気にした事もなかった。
「すまない。お前の気持ちをないがしろにしてきた」
俺は頭を下げて謝罪した。
隊長は驚いて息を飲む。
「今まで尽くしてくれたことは感謝してる。でも今回のことは許せない」
「……あなたらしくない。もういい……もういいですよ」
それきり隊長は何も言わなかった。
後悔と苦い思いで胸が満たされていく。
だがはっきりと、俺は清道への恋心を自覚していた。
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