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迷宮2
あの日、保健室で委員長の背中の火傷の痕を見て、俺の体に衝撃が走った。
前世で清は炎の中に取り残されて死んだんだ。
これはあの時の火傷なの?
生まれ変わってもまだ痛むんだろうか?
こんな火傷の痕が残って……ごめんね。
昔、助けてあげられなくてごめん。
「痛くない。ただの痣だ」
委員長は俺を安心させるように優しく抱きしめてくれた。
俺はほっとしてそのまま眠ってしまったんだ。
次に目覚めた時、俺が襲われたって聞いて、あっくんや春馬くん、会長に加賀美副会長や会計まで心配して駆けつけてくれてた。
襲われたことなんかよりも、千石委員長の背中の火傷の痕の方がショックで俺は放心してた。
会長がしきりに謝ってたけど、会長のせいじゃない。
そんなことより千石委員長ともっと話がしたかったけど、彼は風紀室へ戻っていってしまった。
俺が登校したのは事件から二日後だ。
流石に次の日は休ませてもらった。
事件の事は一部の生徒しか知らないから、俺は風邪ってことになってた。
あっくんがべったりくっついて至れり尽くせりするものだから、自由に動けない。
俺は「トイレ。うんこだからついてこないで」って教室を出た。
あっくんはなぜか真っ赤になっていたけど……大丈夫かな、あの子。
俺は風紀室を探して歩いた。
もう一度、千石委員長に会わなくちゃ。
「清道」
「あっ、副会長」
加賀美副会長だ。心配そうな顔で駆け寄ってきた。
最初、この人は表情を作っていて仮面みたいな顔をしてた。
けど今は表情がころころ変わる。
だから前よりもかっこよくなった。
「どうしたんです?」
「風紀室を探していて」
「あ、案内してあげる。ついてきて」
何か察したように一瞬顔を曇らせた副会長は俺の手を引いた。
たぶん事件の事で行くんだと思ってるんだ。そうじゃなくて、ただ千石委員長に会いたいだけなんだけど。
「懐かしいね。初めて会ったときも道案内してくれたよね」
「……あの日、笑えばいいって君は言ったね」
「うん。作り笑いは似合ってなかった。今はほんとの顔で笑ってる」
「今は?」
「それに悲しんだり、心配したり。ねぇ、俺はもう大丈夫なんだよ。俺は男だし、犯人はきっちり罰則を受けたんだし。だから安心して」
「清道」
だって最近はクールビューティーな副会長らしくない情けない顔をしてるんだもの。
「いつものツンデレに戻っていいよ」
「ツンデレって、そんなふうに思ってたのかい?」
「うん。ギャップ萌えだねって」
「ほんとに君は変わってるよ」
副会長は呆れたように笑ったけど、素直な表情だったので俺は安心した。
いつまでも心配されるのは嫌なんだ。
どっちかというと、俺は皆の心配して世話をやきたいタイプなんだから。
またあっくんに「おかんかよ」って言われちゃうな。
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