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平凡、補佐になる3
「清……あっ」
立ち上がった会長は改めて俺を抱きしめた。
そして、俺の唇にキスをした。
またしても! せっかく穏やかな雰囲気だったのに!
「ん! ん! う、うんっ」
濃厚なキスにくらくらする。
嫌だ、もう。こんなんばっか……
「はっ……もう、ふざけるのもいい加減にッ」
「ふざけてない。お前が好きだ」
「お、俺も好きだよ?」
「そうじゃない。ちゃんと恋愛の好きってやつだ。こんなの初めてなんだ」
恋愛って……え?
あっくんと同じように俺を好きってこと?
「だ、だめだよ。俺は男だし」
「関係ない」
「ほら、おブスって言われてるし」
「清道は可愛い」
「あ、う……」
思わず赤面してしまう。
会長は恐ろしいほど真剣な表情に甘い声で俺の耳に囁いた。
「可愛いよ。清道は優しいし、まっすぐでまぶしい。お前は俺のだって、初めて会ったときに感じたんだ。好きだ。お前が好きだ」
「あ、あの、無理だ」
「なんで?」
このままじゃ間違いが起こってしまう。
会長はあっくんほど単細胞じゃない。
俺は緊張して乾いた唇を舐めて、初めて他人に秘密を話すことにした。
「……俺、前世の記憶があるんだ」
「は? なんの話だ?」
「お願い、聞いて。信じてほしい。嘘じゃない。子供の頃から前世の夢をみるんだ。」
会長はじっと俺の話を聞いてくれてる。
俺は思い切ってすべてを話す。
「俺は前世、女の人で子供がいたんだ。その子を火事で死なせてしまった。助けられなかった。その子も生まれ変わって、この学園にいるって夢でみたんだ。だから俺はここに来た」
俺の大切な存在。
俺の大事な清。
俺のたった一人の幼い息子。
あの子を探す為に、ここに来たんだ。
「頭おかしいって思うかもしれないけど、本当なんだ。子供の名前、清っていうんだ」
「俺がお前の息子の生まれ変わりだってのか?」
「わからない。どうやって確信がもてるのかわからないんだ。もしかしたら清は俺の子供の生まれ変わりかもしれない。だから、俺には無理だよ」
おかしなことを言うやつだって嫌われたかな。
それとも怒った?
「そうか」
「え? 信じてくれるの?」
「なぁ、その話。誰かにしたか?」
「え? まさか! 清にだけだよ」
会長は嬉しそうに笑った。
蕩けるように甘い顔だったので、俺はドキッとした。
「お前にとっても俺は特別な存在なんだな。俺とお前は運命なのかもしれない。でも前世なんて関係ない。大事なのは今だ」
俺様が復活してきて喜ばしいけど……
あれ? 信じてくれたの?
その割には言ってる事が変だ。
「俺の話聞いてた?」
「ああ。前世で親子だったとしても今は他人だ。なんの問題もないだろ」
「ええ? あるよ! 俺の気持ちとか」
「それはこれから口説いて両想いにするから大丈夫だ」
おい待て! あっくんと同レベルなこと言いだしたぞ。
「もう遠慮なんてしない。好きだ。清道」
清々しいほどに吹っ切れた会長が熱い瞳で俺を見つめてる。
どうしよう……俺……ほんとにどうしたらいいんだ。
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