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夏休み1

 俺は誰の気持ちにも応えられないまま、一学期は終わってしまった。  あの平凡贅沢すぎ! とか言われてそうだけど。  前世云々を置いといても、皆のこと同じくらい好きだし大切なんだ。  あっくんは不良ゆえに実家に帰らず寮に残るんだって。  だから俺も残ることにした。あっくん一人だと、ちゃんとご飯食べてるか心配だしね。  俺はお盆だけ帰省することにした。  幸いコンビニはずっと開いてるし、意外と夏休みの半分は寮にいるって生徒もちらほらいた。  十日間の補習を受けるためだけど。  あっくんが心配だなんて偉そうなこと言っちゃったけど、俺も補習メンバーなんだよね。 「あ、委員長」 「おう」  コンビニに向かってたら委員長とばったり会った。風紀の合宿なんだって。  この学園では教師よりも生徒の方が権限が強いから、風紀が中立になってジャッジすることが多いんだとか。 「大変だねぇ」 「お前も残るんなら楽しみだ。俺の部屋に遊びにこいよ」 「うん」 「……おい、俺はお前に惚れてるんだぞ。少しは警戒しろ」  委員長は呆れたようにため息をついて風紀室に戻っていった。  警戒って言ったって……だって男にモテるなんて人生で初めてだし。  前世が女だから、今の俺も女っぽいだとか、美少女っぽい美少年だとかじゃないのに。  あっくんには「おかんっぽい」って言われるけど。  こんな平凡男子のどこがいいのかな?   「清道」  こんどは会長と副会長だ。  この二人も夏休み前半は寮に残って生徒会のお仕事らしい。 「買い物ですか?」 「うん」 「荷物持ちしてやるから、今日の晩飯作ってくれよ」  会長が俺の肩を抱き寄せたのを見て、副会長が顔をしかめた。  副会長もさりげなく俺の腰に手を添える。 「こりゃ両手に花だね」 「なんです?」 「なんでもない。じゃあ、今日はすき焼きにするから、俺の部屋でみんなで食べようか」 「いいぜ。特上肉買ってやる」  会長は太っ腹なことを言って、俺のほっぺにちゅっとキスした。  副会長は勝手な真似をするなと、俺のほっぺをハンカチでゴシゴシと拭いた。 「痛い痛い。赤くなっちゃうよ」 「ああ、ごめん。清道」 「赤くなったら舐めて直してやるよ」  俺と生徒会メンバーの日々はこんな感じでコントみたいだ。  ほんとはずっとこんな風に、皆で仲良く暮らせたらいいのになぁ。  補習も真面目に受けて、あっくんにも勉強を教えてもらって、俺の夏休みは青春から程遠いものとなっていた。 あっくんは不良だが、きちんとしてるんだよね。  有言実行タイプだ。まるでスパルタ家庭教師だ。おかげで二学期の成績は上がりそうだよ。

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