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夏休み3

 結局、夜十時に寮の前で待ち合わせることになった。  副会長が作ってきたくじ引きで、俺と会長、あっくんと副会長がペアになった。 「くそっ! てめぇ、キヨになんかしやがったら許さねえからな!」 「……最悪だ」  先行はあっくんと副会長ペアだ。  林道に咲いてた名前の分からない小さな花を手に持って、体育館の方へ歩いていった。  俺と会長はベンチに座って待機だ。 「会長ってお化け怖い?」 「全然。人間の方が怖いだろ。お前は?」  若いのに深いこと言うなぁ。 「俺も怖くないよ」 「怖いものってあるのか?」 「俺が一番怖いのは……大切な人を失うことだ」  もう二度と失いたくない。  俺はじっと会長の顔を見た。  もう前世のことは考えないようにしようと思うけど、やっぱり頭にちらついてしまう。  ああ、やだな。俺ってこんなにうじうじした性格だったのか。知らなかった。 「清道……」  そんなことを考えながらぼんやり見てたら、会長の顔がずいっと寄ってきた。 「あ! ちょっと」 「お前があんまり見つめるから……」 「そうゆんじゃないから! ファーストキスだったんだからな」  会長の顔を手で押し返す。またキスされてたまるか。  会長は嬉しそうにニヤニヤしてる。 「なに?」 「現世の初めては俺にしとけよ」 「えっ」 「全部俺にしとけよ。清道」  そう言った会長の顔は子供なんかじゃない。  大人びた包容力のある男の表情だった。  俺は自分が分からなくなる。  会長も委員長もあっくんも、俺の全部を受け入れてくれてる。  けど俺は……ずっと悩んで、迷ってる。  前世のことは関係無い。  今、側にいてくれてる相手の事をちゃんと見なくちゃ。

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