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二度と失わない1

あっくんと副会長が帰ってきた。  帰り道、しつこくからかわれたようで、あっくんは拗ねていた。  てゆうか、あっくんてほんとはお化けが苦手だったのか。  今度は俺達の番だ。肝試しなんてアホらしいけど、これも青春だよね。  よほど怖かったのか、あっくんは会長に吠えていた。 「早く帰って来いよ」 「じゃあ、ゆっくり行こうか。清道」 「だから、さっさと行ってさっさと帰って来い!! キヨに手を出すんじゃねぇぞ」 「暗いから気をつけて」 「うん」  俺と会長は旧体育館に向かって歩き出した。  あっくんたちが見えなくなったところで、会長が俺の手を握った。 「ちょっと」 「手くらいつないでもいいだろ?」  少し悲しげに言われて、俺は大人しくなる。  会長の手は温かくて大きい。清の手とは大違いだ。小さくて可愛い手だったな。  ああ、だめだ。  ことあるごとに思い出してしまう。  無言のまま歩き続けて、旧体育館の前に到着した。  木々がざわざわと風に揺れていて、肝試しっぽい雰囲気になってきた。  俺はちょっとぞくっとしちゃう。 「? なんか匂わねぇか?」  会長のやつ、びびらせる気だな。  お化けなんか怖くないと言った手前、俺は強がって会長の手から鍵を奪った。 「なに? 怖くなっちゃったの? 会長は待ってていいよ。俺が花を置いてくるから」  めっちゃ重たい扉だ。後ろから会長が手を貸してくれて、やっと開いた。  俺は先に中に入って、体育館の中央まで歩いた。  暗いな。スマホの明かりで足元を照らした。  あっくんたちの置いた花を見つけて、俺はしゃがんで隣に同じ花を置いた。 「なぁ、お前が前に話した前世の話。あれ、本気なんだな」  なんで今そんなこと聞くのかな。  ここ数日、そのことで悩んでるのに。俺はしゃがんだまま黙り込んだ。 「別にお前が俺を息子と思おうがかまわない。お前がくよくよ悩んでるのを見るのは俺も辛いんだよ」 「会長」  会長は俺の後ろに座って、俺の体をすっぽり包み込むように抱きしめた。 「ほら、息子に甘えろ。お前にとって俺がどんな存在だろうと、俺にとってお前は清道だ。俺の好きなお前だよ」 「……なんでそんなこと言うかな……」  委員長は今を生きろって言う。  けど会長は前世に引きずられてもいい、それも含めてお前だって言ってるんだ。  どっちが正しいのかなんて分からない。  もう頭の中がぐちゃぐちゃだよ。  俺は会長の言葉に甘えて、彼の腕の中で甘えるように目を閉じて身を委ねた。  会長は優しい揺りかごみたいに小さく揺れていて、それがひどく心地よかった。  寝ちゃいそう……。俺は少しウトウトしちゃってた。  どれくらいそうしてたのか分からないけど、なんか変な匂いでハッと目が覚めた。 「やっぱり匂うな」  会長も気付いたみたいで、険しい顔で立ち上がった。  用具室から匂ってきてるみたいだ。  なんか小さな音もしてるし。 「清道、下がってろ。おい、誰かいるのか?」  会長は用具室を開けようとしてるけど……  待って、これって煙の匂いだ。

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