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浄化される心3[side大徳寺]

[side大徳寺]  清道が泣いている。  俺を助けられなかったと、自分を責めてる。  なに言ってんだ。俺はここにいる。  大丈夫だと伝えたいのに声が出ないし、体も動かない。  くそっ! すぐ側にいるのに、どうして伝えることができないんだ。  必死でもがいていると、お腹のあたりが温かくなって光り出した。  これはいったい……?  光の中からふわりと小さな子供が現れた。  そして清道の元へ一目散に駆け寄った。 『おかあちゃん、おれのこと、たすけてくれてありがとうね』  清道の頭を小さな手で優しく撫でている。  それを見ていると、なぜだか涙が出てきた。 『いっしょにいてくれてありがとう。もういいよ。もうだいじょうぶだよ』  俺の代わりに大丈夫だと伝えてくれたその子は、光になって消えてしまった。  そして……俺は病院のベッドの上で目覚めた。  あの後、清道と一緒に病院に連れていかれたんだ。  ケガも火傷もしてなかったが、煙を吸い込んだかもしれないからって念の為に入院していた。  隣のベッドでは清道が眠っている。  俺は起き上がりベッドから下りた。清道のベッドの横に座って、その寝顔を見つめた。  ああ……無事でよかった。  ほっとしたのもあるけど、それ以上に妙に穏やかな気持ちだ。今までは清道は俺のものだって気持ちが強かった。でも今はそうじゃない。  なんだろう……。  すごく不思議な気持ちになってる。こんな感覚は初めてだ。  俺はあの炎の中での清道の言葉を思い出していた。 『大丈夫。俺が守るから。絶対に離さないから……』 『清! 俺もすぐに出るから。先に逃げなさい!』  あの言葉だけで俺の全てが満たされてしまった。 「ありがとう。もう大丈夫だよ」  清道の寝顔を見つめながら無意識に声にした。  それが聞こえたのか、眠っている清道の目尻から涙が零れた。

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