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春 2
「いつもはっきり言わないよね。すぐにうつむくし」
真っ直ぐに放たれた言葉が胸を刺す。
はるか昔に閉じたはずの傷跡を容赦なく抉り、更に血を求めるかのように。
「黙ったままじゃいつまで経っても伝わらないし、分かってもらえるはずないんだよ」
分かってる。
薫は顔を上げ口を開きかけ、やはり言葉を飲み込んだ。
そんなことは痛いほど分かってるんだ。
「……明日行きたくないんだ?」
さっきまでの強い口調から一転し、優しげに立花が訊ねる。
口に出すより先に頷き、それからぽつりと薫が言った。
「行きたくない。言えなかったけど本当は断りたかった」
だけど。
あの場で断わるとこなんて出来なかった。
昼休みの教室、周りの視線。
参加を期待している斎藤の顔を見たらうなずくことしか出来なかった。
たとえすぐに後悔するだろうとしても。
「参加メンバー知ってる?」
立花の問いかけに首を振る。
あの場で聞いたけどすでに後悔しつつある頭には入って来なかった。
「俺もね、誘われてんの」
まぁ、珍しく高橋が来るって聞いたから参加したんだけど、と立花が笑う。
「たまにはみんなで騒ぐのも悪くないと思うよ。気が進まないのは分かるけどせっかくだから楽しもう」
知らない女子もいる中で楽しめるだろうか。
後ろ向きに走り出す思考に引きずられかけた薫を立花が呼び戻す。
「高橋、ちょっと動かないで」
そう言う立花の手がそっと髪に触れた。
指先を見て薫に差し出す。
「あ、桜…」
さっきまで眺めていた桜の花びら。
まだ散るには早いけど風で飛ばされたのだろうか。
薄桃の小さな花びらは手のひらの上で踊り、また風に乗っていった。
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