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春 4

日が落ちると急激に冷え込む春の夕暮れ、 家に向かう薫の足どりは重い。 大学の休みに帰省している義兄となるべく顔を合わせたくないのだ。 4つ違いの義兄、裕人とは両親の再婚で2年前から兄弟として暮らしている。 初めて出来た兄弟に薫も徐々に馴染み穏やかに暮らしていた。 それが今は無邪気に義兄を慕っていた頃には考えられない程の距離をとっている。 そんな薫の態度に戸惑いを覚えながらもそれまでと変わらず接してくれる義兄には感謝している。 思春期だから、と笑って両親に話す義兄に申し訳ないとは思う。 だけど…… それを見たのは偶然だった。 小6の冬、流行り出したインフルエンザのために薫のクラスは学級閉鎖になった。 午後から休校になり、給食のあと保護者に連絡の取れたものから下校することになった。 両親は共働きだが、その日は高校のテスト期間で義兄は午前中に帰宅しているはずだった。 母から義兄がいるはずだから帰宅するようにと言われた薫は久しぶりに義兄と遊べると急ぎ足で帰宅した。 玄関には見慣れない革靴が1つ、義兄のスニーカーの隣に並んでいた。 友達が来てるのか。 たまに連れてくる友達はリビングでテレビゲームをして大騒ぎしているが、今日は静まり返っている。 薫は不思議に思いながらリビングを覗いた。 やっぱり義兄はいない。 今日は部屋にいるらしい。 ソファにランドセルを下ろし手を洗い薫も自室へと階段を登った。 階段の途中で異変を感じた。 か細い悲鳴のような声が聴こえる。 誰かが泣いてる? わずかに開いてるドアの隙間から中を覗いた薫の呼吸が止まる。 義兄の部屋、乱れたベッドの上で絡み合う影が2つ。 仰向けに寝た義兄の上に裸の女性が跨り揺れていた。 女性の腰を掴み突き上げる義兄の腰。 のけぞった女性のすすり泣くような嬌声。 昼間なのにカーテンを締め切った薄闇の中に浮かび上がる光景に薫の思考は停止した。 これ以上見てはいけない。 そう分かっていたのに足は動かなかった。 体を入れ替え女性の上で腰を振る義兄の背中を見つめ続けた。

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