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初夏 3

陽平は自覚したばかりの感情に蓋をして、薫の笑顔を見つめた。 無邪気に笑う薫は以前と違って明るく満ち足りて見える。 あの冬の日、途方に暮れた薫を見つけてからずっと見守ってきた陽平にはその変化は喜ぶべきものだ。 一時期薫の義兄を見る眼差しに熱を感じ、不安に思ったことがあった。 その直感は間違いではないはずだ。 薫は義兄への揺れる感情と自分への嫌悪、家族への罪悪感など複雑に絡み合った感情を持て余し徐々に心を閉ざしていった。 だけど…… 自分にだけは。 いつも心を開き全幅の信頼を寄せてくれた。 そんな薫が可愛く、弟のように大切にしてきた。 その薫が自分から離れ巣立っていくのが寂しいのか。 それとも自分だけのものにしたいという独占欲なのか。 深い思考に沈んでいた陽平に薫が声をかけた。 「陽ちゃん?どこか間違えてた?」 「あ、あぁ。大丈夫だよ。でもここはこの表現の方がいいかも」 今は考えるのはよそう。 陽平は気持ちを切り替え薫に教えることに集中した。 2人は一通り英語のテスト範囲を終わらせて休憩をとった。 陽平は薫が飲み物を取りに行ってる間に無防備に放置されていたスマホを手に取った。 薫らしいシンプルなカバー。 スマホを変えた時に陽平がプレゼントしたものだ。 実は自分のものとお揃いになっている。 ポケットから自分のスマホを取り出し並べてみた。 同じスマホ、同じケース。 自分でも気づかないうちになんらかの繋がりを持とうとした結果か。 陽平は頭を抱えた。 これは認めるしかない。

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