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新藤パパとSNS

——虎太郎と須能がまだ出会う前のこと。 記者1「いよいよ総選挙ですね!! 次こそ首相の座を狙っておいでという噂もありますが、どうなんです!?」  記者2「待ってください新藤さん!! コメントを!! コメントください!」  秘書「はい離れて!! 離れてください!!」  新藤「お騒がせしておりますが、そのあたりのことは記者会見を開き、きちんと私の口から説明させていただく予定ですので、現時点でのコメントは差し控えさせていただきます。じゃ、失礼」  記者3「あっ、新藤さん!! 待ってください!!」  記者4「一言でいいんでコメントを!!」     新藤「やれやれ……」(車に乗り込み、肩をバキボキいわす)  【新藤貫太郎の書斎にて】    疲れたようにどさりと椅子に腰掛け、スマホをいじり始める新藤。 新藤「やれやれ……最近の若い記者は勢いがありすぎる。情熱があるのはいいことだが…………おっ!!??」 (おおお!! 須能さんのイン○タが更新されている!! なるほど、なるほど……雑誌の撮影でモデルをされたのか!! あぁ、こんなに美しいものが手軽に拝めるなんて本当にありがたい、SNS万歳……っ! 着物姿も艶やかでいいが、ジーパンにTシャツというのも素晴らしくお似合いだ。あぁ……心が潤う。綺麗めな格好は拝見したことがあるが、ジーパンを履いておられるところは初めて見たな……顔も小さいしこんなに脚も長くて、こんなにきれいでかっこいいオメガがこの世に存在するなんて信じられない。……わしもあと30歳若かったらなぁ……)と、うっとりしながら軽やかにいいねする。 虎太郎「なんだよ親父、いるなら返事しろよ」(バン、とドアがいきなり開く)  新藤「こっこここたろう!! ノックしなさいといつも言ってるだろう!!」(驚きのあまりスマホをとり落す)  虎太郎「おいおい、何やってんだよ……」(スマホを拾おうとする)  新藤「あーーーっ!! いいからいいから!! いま国家機密文書を読んでいたんだ!! 見たらいかーん!!」  虎太郎「えっ!? ふーん……なんだよ、気をつけろよな」(生ぬるい目つき)  新藤「で、な、なんだ?飯か!? すぐ行くよ!」(あせあせ)  (虎太郎、若干訝しげな顔のまま出て行く)   新藤「ふぅ〜〜……あぶない。……」(汗をふき、またスマホをチェック)  「いやしかし、本当に癒される美しさだ。はんなりした色気があって、疲れが吹き飛ぶ……。こんな素晴らしいオメガを番にできるアルファはいるのかな、一体誰だろうなぁ。やっぱり国城兄弟のどちらかなんだろうなぁ」(ため息交じりにそう言って、スマホを机の上に伏せておく)     ——この数ヶ月後、息子と須能が番になることを、新藤貫太郎はまだ知らない。 おしまい♡

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