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第28話(高吉視点)
麒麟が生徒会役員選挙の結果を片手に教室内で級友とじゃれあっている頃。
同時多発的にそれは決行された。
音頭を取ったのは勿論俺だ。何が大変って、俺自身は真面目に学校に出ていながら2ヵ所同時に報告を受け指示しなければならなかったのが一番大変だった。
学校休んだら承知しないよ、と菫さんに言われては抵抗もできない。一方のチームリーダーだからな。
今日決行することは麒麟には内緒にしている。事後報告は勿論するが、災難続きだった麒麟を煩わせたくなかった。
それは、話を聞いて報復実行を申し出てくれた会社のクリエイターたちや橋元も同意見だ。そもそも実行は麒麟抜きでと言い出したのは菫さんだしな。
平行実行の計画は合わせて二つ。内容を聞いて「えげつなっ!」と俺が思わず吐き捨てたほどの企画だ。輪姦だの近親相姦だのに抵抗があるヤツは以降読み飛ばしてくれ。
そう。つまり、そういう計画。
梅沢祖父は国会内でも上から数える位置にいる政治家だ。腹黒さを隠しもしないふてぶてしさながら政治手腕はなかなかのもので、テレビの報道番組でもよく顔を見る。
そのお茶の間でも有名な政界の権力者が日々忙殺される業務の合間をぬってストレス解消に行っていること。
それが真っ昼間の芸者遊びだった。しかも色事含む。年齢を考えれば、お盛んで結構ですなと嫌味のひとつも口走りたくなる趣味だ。
なんでも、英雄色を好む、とかなんとか嘯いて楽しんでいるそうだ。本物の歴史上の英雄たちに謝れ、と力一杯要求したくなる。
今日はその芸者遊びに興じる日だった。さすがに表だって公言できない趣味だけに数日前から店を押さえて準備万端で実行される遊びだから、スケジュールさえ押さえればこちらから手出しすることは可能だった。
とはいえ、遊び場は信用第一の高級料亭。イベント会社のコネを目一杯使って現場の協力を確保した社員一同の手腕と執念には脱帽の一言だ。
梅沢祖父が料亭に姿を現したのはランチ営業をしていない料亭だからこそ部屋を押さえられた昼時、13時だった。
女将に案内されて二間続きの個室に入る。そこに待ち構えていたのは、手配されていた置き屋の女将と熟女らしき年代の女性の合わせて二人。二人とも頭を下げたままで出迎えたため、顔は見られない状態だ。
梅沢祖父は出迎えた女性に対して続きの間に行っているようにと指示を出し、一旦座卓前にの座椅子に腰掛ける。二人の女将が茶を供し、代金等の手続きを済ませて座敷を出ていくと、茶碗に手もつけずに続きの間にいそいそと入っていった。
何でその場にいない俺が一部始終分かるのかといえば、座敷に隠しカメラをセットしてあったその映像を後で見せてもらったおかげだ。
続きの間は薄暗くて顔もすぐには判別できないくらいだ。そこに朱の布団が伸べてあって、先に移動していた派手な着物で着飾った芸者がやはり頭を下げたままで待っていた。
この先のプレイに、俺は正直唖然としたものだ。
まずは座っていた芸者を転がし、無理矢理に着物を剥ぎ取っていく。そのつもりでいたからこそ手伝おうと芸者が手を出したら、いきなり平手打ちで張り倒されていた。わしの楽しみを取るな!ってところか。
中途半端に脱がせた着物で両手を緩く拘束して顔も隠したままで、豊満な乳房にむしゃぶりつく。遊びなれた男は実に手慣れたもので、女の性感帯を刺激しながら片手は下腹部へだんだん下がって、女性器を弄りだす。
正直、熟女モノは興味のなかった俺でも見ていて興奮してくる、下手なAVより刺激的な映像だ。音声が取れなかったのは残念だが、むしろ音がなかったからこそ興奮したともいえるか。ばばあの喘ぎ声なんか聞きたくもないしな。
で、でっぷりした腹の下ににょきっと生えたグロいイチモツを女の中に突っ込んで、年齢的に体力不足なんだろう、自分が動くより相手を動かす感じでもったり攻めこんだ。興奮してキスの欲求でも湧いたのか、ようやく中途半端にそのままにしていた着物を剥ぎ取った。
ここで初めて、両者ご対面。直前までガツガツ攻めていた動きがピタッと止まった。
まあ、年甲斐もなく女に腰を入れていたら、その女が実の娘だった、なんて事実は、そりゃ固まるわな。硬直ものだ。
親の金を頼って自分磨きに余念がなかったために保てた年齢不詳の美貌を持つ梅沢母は、人妻熟女系デリヘルでさらにお小遣いを稼いでいた。年齢に逆らって美貌を保つのにはお金がかかるのだ。
複数のデリヘルショップに登録して、時間が合う時にだけちょこっと稼ぐという勤務状況だった彼女は、着物が自分で着られることが条件というだけの割りの良い仕事にどうしても出て欲しいとある店の店長に拝まれて頼まれて、今日の仕事を引き受けていた。厄介だった息子も最近は大人しいし、とでも考えたのだろう。
仕事に出てみれば浅草芸者の置き屋で臨時ヘルプを頼まれたという内容で、お相手は体型はともかく地位も名誉もある方だから心配はないと女将に説明を受け。
着てきた着物は自前、髪は女将の紹介で美容室で整えてもらい、出向いた先は赤坂の高級料亭だった。
60前後のじいさんが相手とは思えない精力に抑えきれず喘いで、着物を剥ぎ取られて見返した相手が実の父親なのだから、さすがに驚く。
計画では、寝室の布団の上で顔を合わせる予定だったのだが、相手はさらに自ら上を行って自滅したわけだ。
「頼んだデリヘルが実の娘なんて、娘バカな父親なら大ショックよ!」
などと菫さんは力説していたが。近親相姦までしてしまって、精神に異常を来さなきゃ良いけどな。
一方。
祖父も母も外出して監視の目がなくなった梅沢本人は、転校前につるんでいた不良仲間に誘われてのこのこといつもの溜まり場へ顔を見せた。
そもそも、かぐや姫という名前はその美貌だけで付けられた名前ではない。
呼び始めたのは俺だっていう説もあってびっくりしたもんだが、そういや皮肉交えてそんな風に言ったような覚えもなきにしもあらず。
自分の美貌を笠に着てワガママ放題やりまくり、結局誰にも報いることなく月に帰ったかぐや姫。まさにそのままだ、ってわけだ。
ヤツがいた当時は仲間内にちやほやされて何の問題もなかったようだが、寮に入ったことで梅沢がいなくなると、チーム内でも不満が一気に噴出したそうで。
その不満を橋元に上手いことくすぐられて反撃の狼煙を上げたのが、梅沢の後釜でチームのヘッドを引き継いだ柳沢だ。梅沢がいた頃はまさに親衛隊長のような立場にあっただけに、反動が物凄かったと見える。
その柳沢に呼び出されて何の警戒心もなく梅沢が現れたのは、15時だった。呼び出したのは親側の開始と同じ13時だから、それから支度して移動したとしてもずいぶんのんびりしている。
呼び出されて来てみれば敵対していたチームのヘッドまでいて、さすがに警戒しただろう。けれど、柳沢が橋元と何の屈託も見せずに話している所を見て仲直りしたと判断したようだ。
で、俺が授業を終えて現場に顔を見せた時にはお楽しみの真っ最中だった。時間は16時半。
「まだやってんのかよ」
「この人数だぜ。まだ1周もしてねぇ」
「言質は?」
「撮った。確認するか?」
尋ねられて頷くと、ハンディカメラを渡された。メモリの中には10分ほどの映像がひとつだけ入っていった。
映像を再生する。ソファーに座らされた梅沢に柳沢が擦り寄っているシーンから始まって、何人かまとめて行為が始まるまでの間が映っていた。
これが強姦ではなく合意の上の不純同性交遊であることを保証するための映像だから、本番はほとんど映っていない。けど、正直言ってそんなもの見たくもないからな。それで良い。
今回の報復企画はどちらもハメる側が犯罪者にならないように、がコンセプトだ。法に抵触しないだけの根拠は確保しなくてはならなくて、そのための言質だった。強姦ではなく和姦だ、と言えるように。
声をかけて記録を録っているのは橋元だけれど、主体はあくまでも柳沢率いる『紅狼』というスタンスなのだろう。梅沢を口説いているのも柳沢だ。
『だからな、遥。ご褒美が欲しいんだよ』
『ご褒美ったって何にも持ってねぇよ、俺』
『モノじゃなくてさ。身体でくれれば良いぜ』
『へ? 身体?』
『そ。好きなんだからさ、良いだろ?』
良いだろ、とか言いながら柳沢が梅沢をソファーに押し倒している。耳元に何かしら囁いたようで、梅沢が頷いたのが見えた。その周りを取り囲んでいるメンバーが我も我もと群がっていて、重かったのか梅沢が暴れだしたが。
『だあ~! お前ら、重い! 順番!』
順番待ちすればOKと取るよな、これは。十分な確証だろう。
にしても。好きなんだからお前の気持ちは考慮外っていう柳沢の論法は梅沢理論と同じだ。麒麟の件は橋元に愚痴った覚えはあるが、そこから漏れたのかも知れない。
まぁ、類友って可能性もなくはない。
カメラの画面から橋元に視線を戻す。橋元はやけにマジな顔をして十数人が群がっているソファーを見つめていた。股間を見下ろすと、見事にテントを張ってるんだが。
「で? お前は見てるだけってか?」
「カメラマンだよ。良い画撮れたぜ。後でメモリーカードごとプレゼントしてやるよ」
そう言ってニヤリと笑った橋元は、やっぱり凶悪顔だった。これで高校卒業後の予定がグラビアカメラマンの弟子だとか言うんだから、呆れてしまう。モデルの子に怖がられるぞ。
俺と橋元が遠巻きに眺めているソファーではいつ終わるとも知れない乱交が繰り広げられていて、終わる様子はさっぱり見えない。聞こえて来るのは獣のような荒い息遣いと悲鳴ばかり。もうすでに言葉ではない。
「後はこいつらに任せて良いだろ」
「だな。帰るか」
「写真寄越せよ。多摩まで行ってくる」
「データ送れば良いだろうに、良くやるなぁ。片道1時間だろ? さすが愛妻家」
「うっせぇ」
喜びゃしないだろうが、麒麟の持つ屈託を晴らしてやるのは自分でありたいってワガママもあるんだ。橋元に本当の事を言ってからかわれても気にもならない。
からかわれる事実はムカつくから反撃はするけどな。
「まあ、なんだ」
「……あ?」
「イイ人見つけろよ」
「くそムカつくこの野郎」
人の幸せをからかった罰だ。
ざまぁみろ。
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