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番外編「生涯一度の恋語り」6
自分のに比べれば小ぶりなサイズの麒麟の性器は、本当に同じモノなのか疑いたくなるくらいに俺のモノと違ってキレイだ。皮膚が柔らかくてツルツルでぷるっぷるで。何で使い込むとこんなグロテスクになるんだろうな。思わず比較検証してしまう。
キスして舐めてしゃぶって、そのたびに荒く息を乱して喘ぐ麒麟の声に耳を犯される。可愛くて、ずっと舐めていたい。出させてやらないと麒麟にはツラいだろうし、俺もツラいけどな。それとこれとは別で、今の超お気に入りだ。
先の穴から溢れて零れてくる体液を吸い取ってやると、中身のなくなった穴の口がパクパクと動いていた。それはあれか、キスのおねだりか。
麒麟からは、自分も同じことをすると申し出があったが、それは丁重にお断りした。いや、してくれるというのは嬉しいんだが、麒麟に触られたら止まれる自信がない。せっかく得られたやり直しの機会だ、暴走なんかしたら死ぬほど後悔する。
相変わらず白クマを抱きしめた麒麟は、切なそうに俺を見つめて何か言いたげだ。抱きしめるなら俺の身体を、と言いたいところだが、俺の身体は麒麟の足元だからな。代役は仕方ないとして。
時折イイところを掠めるらしくビクッと身体を跳ねさせては視線が外れるのだが、すぐに戻ってくる。その口から出そうで出ないセリフは何だろうか。早くイかせて? いや、この辺は麒麟が言いそうな言葉じゃないな。もっと気持ち良くさせて欲しいか、別のところも触って欲しいか。もうやめろ、は流石にないと思いたいが。
焦らしてないでいったんイかせるか。そろそろ、俺を入れさせてもらうところも解し始めたい。
「このままイけそう?」
「んぁ? ん……、わか、んない」
はい、経験少なめな麒麟らしい回答きました。そりゃそうか。じゃあ、一緒に検証作業だな。さっきから反応が顕著なところを舌先でくすぐって、口全体で締め上げて、と。そんなに動かなくても締め上げだけでイけそうかな。
ほら、イっちまえ。
「ひぁっ! んやぁっ、あっ! あぁっ!!」
膝を立てさせて広げた足が俺を挟んでビクビク震えるのを感じながら、俺の口の奥に放たれる精液を出されるまま飲み込んでいく。うん、独特の生臭さ。不味い。けど、もったいない。管に残った分まで吸い取ってやって、全部胃に流し込んだ。
俺と麒麟が同性である限り、生命の種にはさせてやれないのに違いはないが、せめて燃えるゴミではなく俺の糧になれ。
「……ふぁ、……はぁ、……はふ? はれ? たかよしさん、出さないの?」
「ん? あぁ、もうねぇぞ」
「ふぇ!? 飲んじゃった!?」
「おう、ご馳走さん」
「うわ、え、あの。お粗末ですみません?」
「何故そこで謝るか」
息を整える余裕もないくせに、笑わせてくる。慣用句をそのまま言えば良いのに、わざわざ一捻り入れたりするから、俺なんかに捕まるんだぞ。変なところで個性的過ぎて面白いのがどうにも癖になる味わいなのだ。惚れるなと言うほうが無茶な話。
まぁ、こっちはこっちの都合で進めよう。せっかくイケるまで追い込んだのだから、落ち着いてしまう前に畳み掛けねば。
絶頂の名残で身体全体がヒクヒク痙攣しているその臍に、口にするようにねっとりとキスを落とし、ビックリさせているうちに尻の穴に指を伸ばす。何度も入らせてもらっているそこは、力が入らない今だから、すんなり指を咥えてくれた。ローションを足しながら、奥まで塗り広げていく。
これも、最初は用意なんてしていなかったから、部屋に使いっぱなしで放置してあった乾燥肌用の普通のローション使ったんだったな。サラサラでほとんど意味なかったから、痛い思いをさせたはずだ。入れる側も痛いんで、2回目からは通販で専用のジェルを買いこんだもんだ。
ヌルヌルではあるが、本来排泄するだけの用途で存在している場所に入れているのだから抵抗感もあるだろうと思うのだが、出したばかりで萎えかけだった麒麟のペニスはというと、元気いっぱい勃ったままでいてくれた。麒麟もしたいと思ってくれている証拠と思って良いだろうか。そうなら嬉しい。
けどまぁ、気持ちはともかく身体は楽な方が良い。ちゃんと反応しているペニスを握って、さっき見つけたイイところを撫でてやろう。
「んあっ、ダメっ! そこ、ダメぇ!」
「んー? 何で?」
「だ、だって、ビリビリくるか……っひゃあっ」
つまり、感じすぎてイヤだと。そんなこと言われちゃ、俺が遠慮するわけなかろうに。
もっといっぱい感じてろ。その隙に尻の穴拡張工事も済ませてやるから。
読書遍歴ゆえに、エロに絡むハンパない語彙力が発揮されたおかげで、俺の極甘トロトロ計画が大幅に前倒しを余儀無くされたのも、割りとすぐのことだった。
「ねぇおねがいぃ! 後生だからぁ! 隙間があるの、寂しいの! 高吉さんのおっきいのでお腹いっぱいにしてぇ!!」
と、こうですよ。具体的な単語ゼロでよくもまぁ男を煽ること。ホント、勘弁しろ。理性かなぐり捨てて襲いかかる寸前だったわ。
そんなわけで、現在の麒麟はというと、白クマはベッドの下に放り投げて俺の肩にしがみつき、アンアンと可愛い声をあげている真っ最中だ。直腸いっぱいに俺のペニスを咥え込んでギュウギュウ締め付けて味わい尽くしている。と言いたいところだが、まぁ、俺が無理矢理入れている異物を受け止めるので精一杯というのが本音だろう。
前が立つから前立腺という身も蓋もない名前のシコリがちょうど俺のペニスの太いところにうまく当たっていて、少し動くだけで麒麟も気持ちよさそうに声をあげて喘いでいる。触らなくても麒麟の形の良いペニスも完勃ち状態のままだ。男の身体は嘘がつけないから、本当に気持ちいいのか目で見てわかるのが助かるというもの。
正直言えば、もっとガンガン動きたいけどな。麒麟に無理はさせたくない。気持ちいいだけで終わらせてやりたいと思う。本来入れる場所じゃないところを使ってるんだから。
けれど、麒麟にもそれでは物足りなかったらしい。
「ね、ねぇ、たかよ、しさ、ぁん……。ど、しよ……」
「ん?」
「おれ、どーしよ、変? んあっ、な、んか、何で?」
「いや、どうした。ツラい?」
何か訴えたいところを揺さぶってたら邪魔だろうから止まってみたら、困ったような泣きそうな微妙な顔で俺を見つめ、宣った。
「なんか、たりないの。何で? 俺、変だよね」
自分でも思っても見なかった自分の身体の訴えに困惑している、と真っ正直に訴えてきた。足りない、というと、何だろう。優しくしすぎたか?
「変、ってことはねぇだろ。どうした。どうしてほしい?」
「もっと、強いのがイイ。痛くても良いから。いつもみたいに、メチャクチャに、してほしい。……って、ごめんなさい。引く、よね?」
「引かねぇよ!」
それ、完全に俺のせいじゃねぇか。
「悪ぃ、ごめん、それ、俺が悪いな。欲しいだけ強請れ。お前が満足できるまでしてやるからな」
「はぅ、ごめ、なさ……」
「謝んな。頼むから、謝んないでくれ。もっとって、言ってくれればそれだけで良い」
とうとう涙まで零した麒麟を宥めるように、顔中にキスを落としていく。唇には特に念入りに。口の中で迷っている舌を絡め取って、ねっとりと吸い上げるように。喉の奥から子犬が鳴くような声が出たのに、やっぱり可愛い声で思わず笑みも浮かぶというもの。
少し離れて表情を窺ってみれば、笑った俺が気に入らなかったのか少し拗ねていた。泣き顔よりもよっぽどその方が良い。
「なるべく痛くないようにするけど、俺には麒麟の限界とかわかんねぇからな。ツラかったら叩いて止めろ。良いな? 我慢するなよ? 我慢されると後で俺がツラいからな?」
俺がツラいという発想はなかったのか、一瞬キョトンとして、それから麒麟がコクコクとたくさん頷いた。理解したかな。信じるぞ。
じゃ、ご希望通り、ストッパー外しますか。
「ふあっ!? あ、ひあっ!」
「どう? 気持ちいい?」
「んぅっ、 んっ! きもち、い! ああぁっ!!」
「ほら、こっち、捕まれ。揺するぞ」
「きゃあああぁんっ! イイ、よぉ!」
一応前立腺狙ってはいるが、だいぶ自分本位に動かさせてもらっているので多少心配はあったんだが。ちゃんと良さそうで、安心した。
困って泣いている間に弛緩しかけていた内壁もキュウッと絞るようにしがみついてきて、こっちも超気持ちいい。あんまり保たねぇな、これ。
アンアン鳴いている間にも時折覗く麒麟の不安そうな顔は、さっきちょいちょい口走っていた、引くの引かないのという不安の発露だろうか。こっちも夢中だから全部は気づいてやれないが、見つけたら頭や頬など撫でて宥めてやるようにする。
精神的な不安感ってのは、すぐには解消しないもんなんだろう、と麒麟を見ていると思う。ホントしつこくて、俺を信用出来ないのか、と思いたくもなるんだが、無意識じゃ仕方ないからな。それに、俺自身、俺の悪行を考えれば信用なんかできるわけもなかったから、自業自得だ。
俺に愛されている自信が揺らがなくなるまで、溺愛して甘やかしてトロットロにしてやらなくちゃあな。覚悟しろよ。我が家の家系の溺愛体質は強力だぞ。
結局、ゴムを3つ使い切って、麒麟には何回イかせたか数えてないんだが、ヘトヘトでぽやんとしている麒麟を抱えて風呂場に移動したのは、日付が変わるくらいの頃だった。
へたり込みそうな麒麟をバスチェアに座らせて、ローションでドロドロの尻の穴をきれいに洗ってやって、追い焚きした湯の中にふたり一緒に浸かるのは、ひとりだと溺れそうという不安からでもあった。
まだ足りないのかと自分でツッコミたくなる我が愚息は放置して、ヘナヘナの麒麟の逸物を手に収める。内側に少し芯らしきものもできるが、流石に品切れ状態らしくそれ以上にはならない可愛い子は、ふにゃっと垂れた状態のまま。少し掠れた声で、もう無理だよ、と麒麟が笑った。
「身体は大丈夫そうか?」
背を凭れさせて抱え込んで、届いたこめかみにキスを落としながら、問いかける。見た感じは大丈夫そうなんだが、中までは見られないからな。本人の自己申告が頼りだ。
麒麟は何故だか嬉しそうにクスクス笑っているんだが。
「大事にしてもらったもの。大丈夫ですよ」
む。敬語復活しやがった。落ち着くと駄目か。タメで話してくれて良いのによ。
「高吉さんはまだ足りなさそう、です?」
「あ? あぁ、このバカ息子は放っておけ。羽目が外れてるだけだ。そのうち治まるだろ」
「羽目外れるくらい喜んでくれたんですね。良かった」
「喜んで、どころか。大はしゃぎだったろ。無理させたんじゃねぇかって心配が先に立つわ」
「ふふ。大丈夫」
本当にその大丈夫を信じて良いのか若干不安だが、幸せそうに笑ってるから、まぁ良いか、という気になった。その幸せそうな顔を見ている俺もしみじみ幸せだし、駄目なら駄目で何とかなるだろ。
「はぁ。なんか、すごく、こう、幸せってこんな感じ?」
「だなぁ。昨日まで不安だらけだったから、余計幸せ噛みしめてるわ」
「んー? そうなの?」
「お前に簡単に許してもらえるなんて思えなかったしな。ホント、ありがとうな」
「ふむ? んー。許すも許さないも、拒否感ほぼなかったし。あれですよ。結果良ければ過程なんてどうでも良いっていう、ね。今幸せだから、何でも良いです」
「太っ腹だなぁ」
「運動しないから本当にお腹太くなりそうですよね。気を付けなくちゃ」
「そっちかよ。夜のセックスダイエット頑張ってりゃ大丈夫じゃね?」
「それは、高吉さんの協力が不可欠ですねぇ」
「張り切って協力させていただきます。任せとけ」
「全面的にお任せしまーす」
ひょいと手を挙げてふざけてみせ、俺を振り返ってふわりと笑う。うん、幸せそうだから、まぁ良かろう。
「全面的に、ねぇ。鷲尾家の家系的に、太りやすい方か? 痩せ型が多い方か?」
「ひょろっと縦長な人が多いねぇ。俺もそろそろ身長伸びると思うんだけど。……って、家系?」
「そりゃ、気にするだろ。将来的に、頑張んねぇと痩せねぇのかほどほどでいけるのかなんて、遺伝要素強ぇからな」
「そんな将来までお任せして良いの?」
「最終的に遺影まで、だな。カッコいい爺さんの写真遺させてやる」
「それって、つまり、一生?」
「一生。何だ、若ぇうちだけの付き合いのつもりだったのか? もう捕まえたからな。手放してなんてやらねぇよ」
「一生、かぁ。それは嬉しいねぇ」
えへへ、なんて照れ笑いしやがって。本気にしてねぇな。
まぁ焦らなくても良いか。俺自身がその覚悟を忘れなきゃ、結果的に一生そばにいられるだろ。
いられると良いなぁ。ヤクザな親の息子なうちと違って鷲尾家はちゃんとした家柄だからなぁ。同性なことといい生まれのことといい、俺の素行もだろうし、障害多そうだ。
できる改善は始めよう。まずできることは、学校の成績あたりかね。
ま、なんとかなるさ。麒麟という原動力がこの腕の中にある限り、何だって乗り越えてやるぜ。
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