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第3話
寝る前に歯磨きをしていたら、征治さんが隣で「あ、間違えた」と呟いた。
いつも朝付ける愛用のコロンをうっかり付けちゃったらしい。
「気になる?うっとおしいかな」
洗い流そうとする征治さんを止め、首筋に鼻を近づけて確認する。
「ううん、気にならない。僕、これと征治さんの匂いが混じったの、大好きなんだ」
もう一度鼻を首すじに埋めてすうーっと吸い込むと、ああなんて幸せな香り。
もう一回だけ。
すうー。胸いっぱいに吸い込んで満足していると、征治さんがガバッっと僕を脇に抱えるようにして、ベッドルームへ引っぱっていった。
ベッドに横になるのももどかし気に、熱いキスを仕掛けてくる。
いつもは優しい軽いキスから始まるのに、最初から情熱的だったせいか、いつもより強く鼻孔をくすぐる征治さんの匂いに反応しているのか、なんだか僕もいつもより火が付くのが早く、興奮してしまう。
お互いの舌を夢中になって貪り合って、脳が早くもぼうっと蕩け始めた。
舌下を強く刺激され溢れ出る唾液、それを飲み込む暇さえ与えられない性急で激しいキスに、嚥下しきれなかったそれが口の端からとろとろと頬を伝って流れていく。
Tシャツの中に入って来た征治さんの手がゾクゾクする感覚を呼び覚ましながら僕の体を這い、僕の体温を上げてゆく。
僕も少しでも征治さんに触れたくて背中に回した手で広い背中を撫でるけど、シャツが邪魔でじれったい。
「はぅ・・・ねえ征治さん、これ脱いで・・・」
「うー」と呻いた征治さんが身を起こす。
「はぁ、陽向・・・色っぽいな」
上から僕を見下ろす征治さんの方がよっぽどそんな顔してるのに。男の色気のようなものを感じてクラクラしてしまう。
先に僕の纏うものを全部剥ぎ取ってから、征治さんは自分のTシャツを脱ぎ捨てた。
僕より一回り大きい綺麗な筋肉のついた男らしい体。
「かっこいい・・・」無意識に呟くと、征治さんは勢いよく覆いかぶさり僕の首筋に唇を這わせた。
最近気づいたが、ここを責められるとすごく興奮する。
誰にも見せられないと思っていたそこを征治さんだけに晒していると思うと、堪らない。
それに、ここは元々動物としての急所だろう。肉食獣は獲物を捕らえるとき頸部を噛んで仕留める。自分の弱点を晒して、征治さんに全てを捧げていると感じるのだ。
征治さんに首筋に甘く歯を立てられると「食べていいよ」という気持ちになる僕はちょっとおかしい?前世はインパラかシマウマ?
喉を甘噛みされ、近くに征治さんの匂いを感じ、興奮が高まっていく。
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