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第15話

あれは・・・花村さん? 無理強いするわけでなく、ただ掌でどうぞあちらへと案内するようなゼスチャーに促されて、自然と足は花村さんの方へ向かった。 だけど、花村さんだとして・・・何故? 僕は花村さんの事をはっきり認識しているけど、花村さんが僕のことを覚えているとは思えなかった。だって、彼が僕の顔を見たのは東京駅でのほんの一瞬だ。直接言葉を交わしてもいない。 今度は花村さんの目的が分からない。 征治さんの話から、きっと悪い人じゃないと思うけれど、僕を呼ぶ理由はなんだろう? 僕が人の波をかき分けて花村さんの前に辿り着くと、彼は極上のスマイルで僕を迎えた。 「初めまして。花村といいます。君とは東京駅で一度会ったことがあるんだけど、覚えているかな?」 やっぱり僕を覚えていたんだ。 「はい」と頷くと、 「あの、ぶしつけな質問だけど、君は松平さんの幼馴染君?」 と尋ねられた。 これはつまり、征治さんの恋人かと聞かれているのだ。顔が赤くなっていくのを感じながら頷くと、「やっぱりそうかぁ」と嬉しそうな声。 「お節介かなとは思ったんだけど、凄く困ってるように見えたから」 「驚かせて悪かったね」 もう一人の大男さんも、さっきとは別人のような声で詫びてくれる。 促されて、近くのベンチに腰掛けた。 「実はね、俺達あそこでコーヒー飲んでたの」 と少し離れたコーヒーショップを指し示す。ちょうど先ほどのペットショップの斜め向かいだ。 「そこから、たまたま君を見てたんだ。最初は誰だか分からなかったんだけどね。 ガラスの壁が間にあるから声は聞こえないんだけど、君はどうやら迷子の女の子に気付いたみたいだった。そこからの君の行動がなんだか面白くてね。あ、気分を害したらごめんね」 あの一連のあたふたを見られていたのかと思うと恥ずかしくて、また顔が熱くなった。 「君は・・・」 「あの、風見と言います」 「こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、一連の行動を見ていて、風見君は対人恐怖症なのかなと思った。俺達の知り合いにもそういう人がいてね。松平さんも『とても繊細でシャイ』だと表現していたし。 だけど、女の子に話しかける前にわざわざサングラスを外して眼鏡に換えて、迷子が無事解決するとすぐにサングラスに掛け替えてただろう?あれは、子供を怖がらせないようにしたんじゃないの?」 その通りだったので、頷いた。 「きっと本当は怖いのに頑張ったんだなあと思ってたら、今度はもっと手強そうな肉食女子達に捕まって。彼女たちがカメラを取り出したときの君の引き攣った蒼白な顔を見たら、つい助けてあげたくなっちゃって。余計なお世話だったかな?」 「・・・いいえ、助かりました」 「ああいう子たちはインスタ映えする男を見つけたら、なかなか引き下がらないからな」 「ああ、紹介が遅れたね。彼は僕のパートナーの八神。僕が行くより、彼が行く方が効果的だと思って派遣しました。なかなかの名演技だったでしょ?」 「蒼、やめろ」 苦笑いしている八神さんの大きな手の薬指には、花村さんとお揃いのリングが嵌められていた。

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