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第24話

「征治さん、僕、レイに会ってみようと思うんだ」 「陽向の報告を聞く限り、早く会いたいと急かすわけでもないし、あまり危険性はないかもね。でも、彼は直接会って何を話したいんだろうね」 「うん・・・それが分からないんだけど。でも、僕にとってレイは恩人なんだ。レイのお陰でこうして征治さんといられる。一度ちゃんとお礼を言いたい」 「そうだね。そういう意味では俺にとっても大恩人だ。いい話だと言うし、彼はSOS を出しているわけではないのかな。どういう方法がいいか考えよう」 征治さんと二人でレイと会う計画を立てた。裏が無いと信じたいが、最悪の事態は想定しておくことにした。 僕が親切だと思っていた連中に騙されたように、征治さんもかつて苦境に陥ったとき、甘言と共にすり寄ってきた輩を沢山見ていたのだ。 アウェーは緊急時の対応が難しいから、交通費はこちらが負担で首都圏までレイに来てもらう。 会う場所はこちらで個室のある店を選定する。店は人の多い商業施設に入っているところを選ぶ。万が一店に横付けされた車などに引き込まれないためだ。それに何かあった時、周りに目撃者が沢山いた方がいい。 征治さんは店まで一緒に行くと言って譲らなかった。個室には勿論入らないが、外の席で待機していると言う。 「まさか白昼堂々拉致されるなんてことはないと思うけどさ。何かあったらすぐ動けるようにしておきたい。本当は部屋に盗聴器とカメラとボディガードでもつけたいぐらいだよ」 征治さんは心配し過ぎなような気もするが「備えあれば憂いなし」と言いくるめられ、先日のショッピングモールでの僕の不甲斐無さもあったので、そうしてもらうことにした。 レイはこちらの申し出をすんなり呑んでくれた。 少しでも富山に近い大宮の方がいいかと聞いたが、新幹線に乗ってしまえば大して変わらないから東京まで来てくれると言う。それに東京で何か買いたいものがあるらしい。それは何かと尋ねると、意外な答えが返って来た。 普段は魚と和食ばかりだから洋食がいいというレイの希望に沿って、東京駅近くの商業ビル内でイタリアの家庭料理を出す個室のあるレストランを征治さんが探してくれた。 実際に足を運んで、店や個室の様子を確認する徹底ぶりだった。 そうして、10月最後の土曜日にレイと再会することになった。

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