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第64話

荒い息のまま、抱き合う。 達した後の気怠い体を寄り添わせてのクールダウンの時間が、僕は結構好きだ。 征治さんの右手が背中から脇腹をゆっくり撫でながら腰骨の辺りへやって来て、さわさわとさする。 くすぐったくて身を捩ると、 「痛くない?」 と聞かれた。 最初、何のことか分からずにきょとんとするが、噛んだ箇所の事を言っているのだと分かり、「大丈夫」と笑う。 「なんでいつも噛みたくなっちゃうんだろう・・・。我慢できなくて、ごめん」 「ふふふ、前世が肉食獣だったのかもね。大丈夫だよ、ちゃんとセーブしてくれてるでしょ?切れたり血が出たことなんてないもん。それに・・・ほんとはちょっと嬉しくて興奮する」 「ほんと?だけど、これからもちゃんとセーブできるかな・・・陽向、どんどん美味しそうになっていってるからさ」 「美味しそう?」 「自分では気付いてない?相変わらず華奢だけど、以前に比べて痩せ過ぎ感が無くなって健康的に見えるし、血色や肌艶も凄く良くなってるよ」 「・・・そういえば、前はスキニージーンズでもベルトでしっかり締めないとずり落ちそうだったけど、最近はそうでもない・・・きっと、前よりちゃんとご飯を食べるようになったからじゃないかな。前は食べるのがちっとも楽しくなくて、最低限の栄養分を補給してるぐらいにしか捉えてなかったから」 「それと、ふふ・・・いい恋をしてるからじゃない?」 そう言って僕の髪を梳くと、甘ーいキスを仕掛けてくる。ぐっと肘をついて上半身を起こし、次第にキスを深くする征治さんの手が脇腹を撫でる。やがて首筋を辿って耳朶を甘噛みされ、あれ?と思う。 「あの、征治さん・・・僕がホカホカタオル持ってこようか?」 「陽向・・・もう一回したい・・・」 甘えるような声で耳元に囁かれ、どきどきしてしまった。 「え・・・でも明日、チェストとカーテン買いに行こうって・・・」 「・・・だめ?」 うわあ、なにその声・・・征治さんがこんな声出せるの知らなかったよ・・・。 だけど、今でも結構腰に負担が掛かってる気がするんだけど、もう一度して明日ちゃんと歩けるかなあ・・・。 だけど、僕は気付いてしまった。もうすでに征治さんのものが硬く兆していることに。 「陽向があんまり美味しそうだし・・・これから一緒に暮らせるんだなあと思ったら嬉しくて」 そっかあ・・・。 浮かれているのは僕だけじゃなかったんだ。 急に征治さんが可愛く愛おしく思えてきて、 「明日の買い物は保証できないよ?」 と笑うと 「一週間チェストが無くても死なない」 なんて言う。一週間カーテンが無いのは、困ると思うけどなあ。でも可愛いから許してしまう。 両手を広げて迎え入れるポーズをすると、「ありがと」と嬉しそうに笑ってほっぺにチュッとされた。

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