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第67話  <第7章>

僕の「カシカカノウ」の出版祝いを兼ねた食事会は、山瀬家の馴染みの隠れ家的レストランへ行くことになっていた。 「隠れ家的」な為、どの駅からも遠く分かりにくい場所なのでタクシーで行こうとの山瀬さんの提案に沿って、ユニコルノの入っているビルからほど近いホテルのロビーに6時半に集合ということになった。 約束の時間より少し早く着いたなと、ホテルの回転ドアに近づいていくと、ポンと肩を叩かれた。 山瀬さんだった。 ドアを一緒にくぐりながら挨拶をする。 「もう征治は来てるかな?俺は外に出てたから地下鉄の駅から直接来たんだ」 と言う山瀬さんと一緒にロビーをぐるりと見まわして、ソファーに座る征治さんを発見した。 だが・・・一人ではない。 こちらに背を向け、征治さんと向かい合って座っている男の姿と、征治さんの表情になぜか嫌な予感がした。 それは山瀬さんも同じだったようで、隣で「ん?」と呟き、僕の肘を掴んで歩みを止めさせた。 ちょうどその時、氷の微笑を湛えた征治さんの視線が一瞬こちらを捉えた。 それが「待ってて」と言っている様に感じ、隣を窺うと、山瀬さんも「ちょっと様子を見よう」と耳元で囁いた。 征治さんが向かいの男に自分の腕時計を指し示し、取り出したスマホをヒラヒラさせている。そして、画面を操作したと思ったら、僕たち二人のスマホが同時に震えた。 『少し、お待たせするかもしれません』 すぐに山瀬さんが『了解』と返信した。 そして、「ひなたん、相手に見つからない程度に近づこう」と小声で言うと、男の斜め後ろにある応接セットに静かに移動した。 ちょうど間に大きな観葉植物の鉢が並べて置いてあり、ぱっと振り返ったぐらいではこちらは見えないだろう。 いったいどうしたんだろう? 山瀬さんは更に「ひなたん、その眼鏡、ちょっと貸して」と言って、僕の太いフレームの伊達メガネを掛けると、カバンからICレコーダーを取り出した。 それからスマホを取り出すと何やら操作している。 そして、僕に向かって悪戯っぽく笑って、しーっと言うように人差し指を唇の前に立てた。 音もなく立ち上がった山瀬さんは、素早い身のこなしで鉢植えに近づくと、巨大な鉢の土の表面に並べられている飾り石の上にさり気なくICレコーダーとスマホを置くと、戻って来た。 今度は上着のポケットからワイヤレスイヤホンを取り出し、片方を自分の耳に嵌めると、コードでつながっているもう一方を僕に差し出した。 え?二人の話をここで聞くの?まるでスパイ映画みたいじゃないか。 驚きつつも、引っぱって外れないように山瀬さんのすぐ傍に並んで座り、渡された反対側のイヤホンを自分の耳に嵌めると音声が飛び込んできた。

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