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第77話

その後、すぐにクリスマスがやって来た。 お互いにもう何年もクリスマスは一人でひっそり過ごしてきた。 特に去年はお互いに強く想い合っていながらその気持ちが交差することは無く、胸に苦しい塊を抱えて街のイルミネーションを見ていたのを思い出す。 今年は恋人として陽向が隣にいて、一緒に暮らしているのだと思うと感慨深かった。 ちょうど24日が土曜日だったこともあり、二人でディナーを作った。 チキンではなくローストビーフだ。 まだオーブン機能付きレンジは買っていなかったので、陽向がネットで調べた炊飯器を使って作るレシピを試したが、簡単なうえにびっくりするほど美味しくできた。 ケーキはさすがにまだ自分たちの技量では無理だろうと、小さなブッシュドノエルを買って来た。 クリスマスプレゼントは一緒に買い物に出掛けたときに見つけた素晴らしい色合いと滑らかな手触りのマフラーを、色違いでお互いに贈り合った。 「時々交換しない?そうしたら、その日征治さんの匂いにくるまれて過ごせる」などと陽向が可愛い事を言う。 山瀬さんから預かっていたプレゼントを開けると陽向が歓声をあげた。 今まで山瀬さんからクリスマスプレゼントなど貰ったことは無いが、今年は陽向とのこともあって特別だと言う。高価なものを貰っても困るのでこちらからリクエストをしていた。 「これ、どういうこと!?どうやったの!?」 洒落た額縁に入った4つ切りサイズの写真。 陽向が大事に持っていた、小太郎と一緒に写っている子供の頃のふたりの写真だ。色褪せ、折り曲げられてボロボロだったL判を画像修復して大きく引き伸ばしたのだ。 色鮮やかに蘇ったそれを陽向は殊の外喜び、キッチンのカウンターに載せ「コタにもお裾分け」と、その前にローストビーフを切った小皿を置いた。 その夜も二人で抱き合った。 ワインが残っているのか、気分の高揚が続いているのか、陽向は素直に快感に身を任せて揺れている。 艶っぽい喘ぎ声を漏らす陽向を抱きながら、時折、陽向の全部がちゃんとこの腕の中にあるのかと湧き上がって来る不安を、懸命に振り払う。 自分を好きになりたいから空手を始めると言った陽向は、「僕に欠落しているものの一部があそこにある気がする」という言葉で補足をした。 未だに考え込む理由を話そうとしない陽向。 その欠落しているものは俺では埋められないのか? 幾度となく首をもたげるその疑問を、今夜も黙って飲み下す。 「ああっ、征治さん・・・征治さん・・・」 こうやって必死に縋り付きながら呼ぶ名前が俺の名なのだから、それでいいではないか。 己の存在を陽向の中に深く刻み込む様に、白い体をかき(いだ)き、何度も強く穿ち続けた。

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