食後にソファーで征治さんの脚の間に潜り込む。後ろから抱きかかえてもらって背中は征治さんの胸に預けて夢心地だ。手には僕が送った絵手紙の数々。 「ねえ、いつか征治さんと一緒にもう一度沖縄に行きたいな。今回はバカンスに行くっていう心持ちじゃなかったし、ミッションが完了したら寄り道しないですぐに帰りたくなっちゃって、何も見てない。帰りの飛行機で窓の外を見下ろして、ちょっと勿体なかったなって。 征治さんも沖縄には行ったことないんでしょ？」 あれ？返事がないけど、征治さん寝てる？ 「征治さん？」 「ああごめん。腕の中に陽向がいるなあって・・・ふふ、泡盛で酔った」 そう言って僕の肩に額を預ける。 「ええ、大丈夫？」 振り返ろうとすると、頭を少し横に振って 「気持ちいいからこのままで」 「そう？あ、そうだ。スマホが壊れる前にね、田中さんから電話があったんだよ。 沖縄に行く前にレイからも話をきけないかって言われて、僕、翔太に連絡を取ったんだ。もしかしたら、もう忘れてしまいたいかも知れないし、万が一周りの人に知られることになったら嫌だろうから、一応趣旨を話して、でも無理強いはしないよって。その時は翔太、『考えてみる』って迷ってるみたいだった。 だけど、田中さんの方にインタビューOKの返事が来たって。僕のしようとしてること聞いて、自分の過去を婚約者にも話すことにしたんだって。 決断するのにきっとすごく勇気がいっただろうけど、僕はよかったと思うな。家庭ってどこへ飛んで行ってても最後は戻って来る巣のようなものでしょ？ 僕にとっての征治さんみたいに、全てを知って貰ったうえで受け入れてもらえる安心できる場所の方がいいよね」 「・・・陽向の戻って来る場所は・・・ここで合ってた？」 え？ ・・・今、何て？ 「・・・陽向の戻るべき場所は、ここでいいのかな・・・」 どういうこと？ 思わず征治さんの腕をほどき、ぐるんと向き直り、床に膝をついて征治さんの顔を下から覗き込む。 「どういう意味？他にどこがあるっていうの？ 僕にとって、ここは絶対で唯一の場所だよ！？」 なんでそんなこと言うのと言いつのりそうになって、征治さんの目に浮かぶどこか悲し気な色に気付いて口を噤む。