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第122話
征治さんの両手首を握って、顔から引きはがすように下ろす。
「ねえ征治さん、こっちを見て」
僕が体ごと征治さんの方を向いて姿勢を正すと、征治さんも膝に付いていた肘を外してこちらを向いて体を起こした。
「元々はね、僕が征治さんの横に並ぶ自信がついたら、言おうと思ってた。
だけど、確かに過去に対して一定の踏ん切りがついたけど、完璧な自信がつくのがいつなのか分からない。そもそも、そんな日が来るかも分からない。実際、今も、こうやって大きな失敗をして後からやっと気付くような駄目な僕だ。
それに、征治さんだって完璧じゃないってことが分かった。とっても繊細な部分があって、嫌だと思うことがあってもそれをぶつけられずに笑顔で覆い隠しちゃう。内側ではとても苦しんでいるのに。
だけど、完璧な人間なんていないよね?きっとこれからだって、僕も征治さんも失敗をする。でも、その都度対処していけばいいんだ。失敗したって終わりじゃない」
「・・・そうだね」
「だからね、今日、言っちゃう」
僕は改めて背筋を伸ばして、軽く咳ばらいをした。
「征治さん。どんな言葉を使っても言い表せない程、愛してる」
征治さんの手を取って指にキスをした。
「僕と結婚してください」
征治さんが息を飲んだ。
「僕を征治さんの世界でたった一人の特別にして。そしてずっと隣にいて」
眼を見開き、固まっている征治さんの頬に徐々に赤みがさし始める。
そして、きゅっと眉根が寄ったかと思ったら、ぐいと引き寄せられ抱き締められた。
「征治さんの全部が好きだよ。
強いところも優しいところも、
誠実なところも、
頭が良くてなんでもできるのに奢らないところも。
冗談が好きで面白いところも、
でも根はとっても真面目なところも、
おおらかなところも、
だけど繊細で脆い部分もあるのも、
全部、大好き。
まだまだあるけど、とても並べきらない。
僕には勿体ないぐらいの王子様だけど、僕が一生独り占めしたい。
それにもう僕の何分の一かは征治さんで出来てるから、今更離れたら出血多量で死んじゃうんだ」
甘えるように額を征治さんの首筋に擦り付け、腕を征治さんの首に回す。
「征治さん、愛してる」
耳元で囁くと、更に強く抱き締められた。
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